第285回「竹中平蔵の功罪」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第284回「笑って送り出せる会社に人が集まる」

 第285回「竹中平蔵の功罪」 


安田

竹中平蔵さんのせいで「今のように非正規雇用が増えた」って言われてますよね。

石塚

そういう意見が多いみたいです。

安田

竹中平蔵さんのインタビューを読むと、全く違うことが書かれているんですけど。

石塚

本人が意図したこととは全然違うということでしょうね。

安田

これ、どっちが正しいんでしょう。竹中平蔵さんが非正規雇用を増やして低所得者層を増やしたのか。そうじゃなく、ちゃんと日本のために頑張った人なのか。

石塚

その答えで言うと「日本の格差社会を決定づけた政策を1番押した」のが竹中さんです。

安田

それは派遣の自由化ということですか?今もパソナの会長をやって叩かれてますよね。

石塚

派遣が増えたのは結果論です。要するに新自由主義経済と言われる「強いものが勝ち、弱いものは負け組でしょうがない。一生懸命やった人が勝つんだから」ってことを進めた人。

安田

弱肉強食ですね。「稼ぎたけりゃ頑張りゃいいじゃん」みたいな。

石塚

おっしゃる通り。

安田

竹中さんが言っていることにも説得力がありまして。「弱い会社を残すから、みんな給料が増えないんだ」と。これは石塚さんもよく言うゾンビ企業ですよね。

石塚

そうです。

安田

ゾンビ企業がなくなって、もっと給料を払える会社が残って、みんな収入が増えて、経済も活性化すると。この理論は間違ってない気がするわけですよ。

石塚

その部分だけ取れば竹中さんの主張は間違ってないと思う。問題はそうなった時にどうしても弾かれていく人が出てくること。

安田

そのセーフティーネットとして「ベーシックインカムを作るべきだ」って書かれてました。

石塚

そう簡単にはいかないでしょう。財源もないし。

安田

「終身雇用がいちばんの問題だ」と書かれていました。ある程度解雇できないと企業は怖くて雇用を増やせない。とくに大企業は。

石塚

それは間違いないでしょうね。

安田

中小企業や外資系企業は平気で解雇できる。けど大企業はそれができない。だから大企業はどんどん非正規雇用を増やしている。労働組合が圧力かけるから正規雇用が増えない。そういう主張なんですけど。

石塚

おっしゃる通りだと思います。

安田

解雇されて働けなくなる人は国が守ればいいと。非常に理にかなった理論ですけど。

石塚

確かに理論上はそうです。でも実際に彼がやったことって「切らなくてもいい部分まで切ってしまった外科手術」みたいなところがある。

安田

そうなんですか。

石塚

バブル崩壊後の経済処理を「一気にやってしまった」というのは、完全にミスだったわけです。不動産では焦げたけど本体事業は安泰だったんだから。

安田

そこまで切ってしまったのは間違いだったと。

石塚

竹中平蔵という人は日本の学者の中でいちばん営業が上手な人だと僕は思っていて。この人がセールスをやったら間違いなくトップセールスになると思う。

安田

お金儲けが上手ってことですか。

石塚

日本の政策の変換点に食い込んで、いちばん儲けた学者は多分この人だと思う。

安田

結果的にパソナの会長にもなったし。

石塚

派遣会社云々なんていうのは付け足しの話で。

安田

問題の本質はそこではない?

石塚

改革自体はいいことなんだけど、アメリカの手先のように「日本のいい会社のいい部分を全部アメリカ資本に渡しちゃったよね」っていう。そこが最大の問題ですよ。

安田

必要のないところまで改革しちゃったってことですね。

石塚

必要ないところまで破綻させて売ってしまった。そして「自分はたくさん儲けたよね」っていうのが叩かれるところ。学者でありながら権力に近付いていちばん美味しいところを掴んで。

安田

渋沢栄一も「日本経済の父」と言われてますけど、本人がいちばん大金持ちですよ。

石塚

渋沢栄一は立ち上げた後に引退していくじゃないですか。竹中さんは体制を変えると言いながら自分はずっと居座ってる。論理矛盾を起こしてますよ。だから嫌われるんです。

安田

なるほど。引き際が良くないと。

石塚

パシっと引退して「僕はそういうポジションはもういいんです。やることやったから」だったらよかった。破綻処理を失敗したという事実はありますけど。

安田

失敗だったというのはもう確定ですか。

石塚

そこが間違いだったということは、もう周知の事実ですよ。

安田

ご本人もそのことは気づいているんですか? 

石塚

仮に気づいていたとしても死ぬまで「あれが正しかった」って言い続けると思います。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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