石塚さん、かなり前から期間限定社員を推してるじゃないですか。

はい。僕は基本的に「全ての社員を最長10年の期間限定社員にすべきだ」と思ってます。

会社側から見たメリットは大きいと思うんですけど。使えない人材なら10年で切ればいいので。でも社員から見たらどうなんでしょう。

社員のメリットも大きいです。まず若手人材の収入が格段にアップします。

終身雇用だから上げにくいってことですか。

おっしゃる通り。10年限定なら思い切った報酬提示が可能になります。

20代で1000万円とか。

全く問題ないですね。

報酬以外のメリットもありますか？ずって働き続けられるほうが安心だと思うんですけど。

20代の優秀人材はもうそんなこと求めてないんですよ。それよりもスキルアップできる環境かどうか。ここが大きいです。

ひとつの会社に人生を賭けたりしないってことですか。

そんなの「もう非現実的だ」って分かってます。そこから目を背けているのは会社の上の層だけで。

50〜60代はしがみついていくしかないですから。

それも難しくなっていきますよ。役職定年もあるし、実質的に収入がどんどん下がっていきます。

だから若い子は終身雇用を求めなくなったんでしょうね。

ちゃんとスキルを身に付けて稼いでいこうとしてる。凄くまともだと僕は思いますね。

若い子はずっと転職サイトに登録してるって言うじゃないですか。

必要なスキルを付けて、また転職してキャリアアップしていく、という前提なので。

ずっと繋ぎ止めるのはもう無理ですか。

無理だと思います。若い人材を確保するなら3年〜5年でどういうスキルが身につくかを明確にしてあげないと。

10年では長過ぎるってことでしょうか。

20代に10年は長いですね。恐らく途中で辞めてしまうと思います。

若い子の転職履歴って就職で不利にならないんですか。

仮に今29歳だとして、「次で転職6社目です」でも、まず100パーセント決まりますよ。

そうですか。

何の仕事をやってきたかによって年収の幅はあるけど。何か1本筋の通ったスキルと転職を希望する理由があれば100パーセント決まります。

転職ばかりするのは「堪え性のないダメな人間だ」って昔は言われてましたけど。

転職回数についての理解や評価は完全に変わったと思います。

優秀な人材がどんどん転職していく時代になったということですよね。もはやそれが常識だと。

逆に40代まで一度も転職経験のない人とかはマズイと思いますよ。

時代は変わりましたね。

転職することでスキルを身につけて自分の市場価値を上げていく。これが当たり前になってます。

そこを前提に募集しないといけないですよね。「うちの会社なら〇〇年でこのスキルが付きます」「辞めて転職すると着実に年収が増えます」みたいな打ち出しで。

おっしゃる通りです。

だけどそういう求人はあまり見たことがないです。

ないですね。経営者が頭を切り替えられてないということですよ。

愛社精神があって辞めないのが「いい人材」だと思ってますもんね。

「目的のスキルがついたから辞めます」というのは当然の話だと思うんです。優秀な人材を「自分の会社だけで囲い込もう」という発想自体をやめないと。そこさえ切り替えれば逆にチャンスなんですけどね。

どう発想を切り替えればいいんでしょう。

要は辞めるという決断を許せるかどうか。「そっか、辞めるのか。今までありがとう」となるのか。それとも「やめるなんて許せない。何もできなかったお前がここまでなれたのは誰のおかげなんだ」ってなるか。ここが分かれ道でしょうね。