2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第289回「大卒はブルーカラーを目指すべし」
熊本と北海道(千歳)に半導体工場ができるじゃないですか。
はいはい。TSMCですよね。
若年労働者って、これからどんどん減っていくわけですよね。
減っていきます。
そんな状況の日本に、なぜ最先端の半導体工場を作るのでしょうか。
台湾はいま中国問題で危ないじゃないですか。日本は治安もいいし、人は真面目だし、工場を作る環境としては最適なんでしょう。
これだけ人不足でも?
TSMCは圧倒的に賃金がいいわけですよ。そうすると、やっぱり賃金のいい方に人は行きますよね。
行くでしょうね。
これから日本の10代、20代の未来は明るいと思います。
賃金の高い工場が出来ることで、周りも上げざるを得なくなるってことですね。
もちろん全ての企業が同じようには上げられない。だから2極化するんだけど、若年人口は少ないからかなり強気で選べるわけです。若くて真面目なだけで十分価値がある。
言われたことを真面目にやるだけじゃ「もう給料は上がらない」って言われていたのに。
40〜50代は厳しいと思います。だけど10代20代に関して言えば、真面目に言った通りやってくれるだけでありがたいんですよ。
日本の若い子って本当に真面目に働きますからね。
学力レベルも低いわけじゃないし。その割に人件費も物価も安いから。
だから半導体メーカーがこうやって日本に工場を建てるわけですね。この先「ものづくりニッポン」が復活する可能性もありますか?
全体の人口が減っているのでそこまでは難しいと思います。TSMCはすごく目の付け所がいいんですよ。このタイミングで半導体工場を作るというのが。
なるほど。でも工場勤務って日本では人気がないですよね。
そこも変わっていくと思います。これからホワイトカラーの求人数はすごく減るので。
そんなに減りますか?
いらないですもん。そんなに。
いらないですか。
0→1を考える人だけでいい。だからそんなに数はいらない。そもそもそういう仕事ができる人は100人に1人もいない。
なるほど。
そうすると何が起こるかっていうと、10年以内にホワイトカラー系の教育を受けた人たちの労働力移動が始まるわけですよ。エッセンシャルワークとか工場勤務とか。
移動しますかね。ブルーカラー系にはちょっと抵抗がありそうですけど。
いわゆる町工場の油まみれみたいなものを想像すると思うんですけど。今の最先端工場ってものすごく綺麗なんですよ。操作は全部タッチパネルとかタブレットで。
これまでのブルーカラーとはイメージが違うと。
そう。半導体とか医薬品製造とか飲料品とか。給料はいいし、工場は綺麗だし、9時→5時で終わるし。だけどある程度の能力が必要で。大卒レベルの人がそちらにシフトしていくと予想しています。
エアコンも完備ですか?
もちろんエアコン完備ですよ。空気もめちゃくちゃ綺麗です。
イメージが変わりますね。
言われたことを言われた通りやって、すごく高い給料がもらえる。真面目な日本人に合っている仕事です。
そうなると日本のメーカーも復活するんでしょうか。
最先端の開発は難しいと思います。それより日本人の特徴を活かして「最終工程と仕上げ」のファウンダリーに特化した方がいい。
開発は海外でやってもらって、精密さや細かさが求められる仕上げ作業に特化すると。
おっしゃる通り。これから大卒は工場に行った方がいい。未経験でいきなり38万円スタートもありますよ。
それは大企業の話ですよね?
はい。言い方悪いですけどFランクの大卒でも今なら大手に行けちゃうんです。今が大チャンスです。10年もしたら優秀な大卒が大量に現場に流れていきます。
大卒ホワイトカラーが減って、大卒ブルーカラーが増え、そして生活が豊かになって安定していくと。
GMARCHレベルの文系学部を出たら工場製造職を目指した方がいい。工場長になったらすごいですよ。年収1000万じゃ効かない。工場長って偉いんですよ。
工場長経験があれば定年になっても中小企業でニーズがあるし。
あるある。これからのエリート街道はそっちですよ。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。