2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第301回「自治体はこうやって消滅していく」
石塚さん言ってましたよね。能登を地震前の状態に戻すべきかどうか考えなきゃいけないって。
1億2000万人のインフラを5000万人で維持するのはもう無理なので。
それってだいぶ遠い先の話だと思っていたんですけど。実際に744の自治体が消滅する可能性があるそうで。全体の4割らしいです。
能登地震の復興状況ってあまりテレビは報道しないんですけど。あの瓦礫の山ってどれぐらい片付けられてるかご存知ですか?
いえ。知りません。
実はほとんど手つかずなんです。だけどテレビは映さなくて。上下水道がなんとか通ったのが割と最近のニュースでした。
そうなんですね。ボランティアも入れないって言われてましたよね。
国が補正予算を組んでさっさとやればよかったんですけど。実際、何も片付いてないです。片付いてないからボランティアの人さえも入れないっていう。
なるほど。
これが現実ですよ。やる気があればもう既に片付いてます。
この記事によると2020〜50年の間に20〜39歳の女性が半分以下になると。つまり1人あたりの出生数が倍になって、ようやく現状維持ができる人数になってしまう。
今の状況から考えると出生数が減ることはあっても、増えることはないでしょう。
そうなると「産める人が半分になって半分の自治体がなくなる」という計算です。出生率がさらに下がれば半分どころでは済まないかも。
済まないでしょうね。
今のインフラを維持するのは無理ってことですよね。
実際に能登で何が起こっているかというと、若い世代ほど金沢に移住しちゃうわけですよ。
復興を待たずに引っ越してしまうと。
金沢って能登に比べると都会じゃないですか。
はい。
子供も楽しいことがいっぱいあって「もう能登なんて戻りたくないよ」っていう。あまりこういう現実は報道されないんですけど。
じつは先日、石垣島に旅行に行きまして。
いいですね。
石垣島から船で10分くらいの所に竹富島というのがありまして。
有名な島ですよね。
はい。凄くいいところなんです。昔ながらの町並みが残っていて。でも子供はみんな島を出ていくんですって。
でしょうね。
逆に外から「この島で暮らしたい」という人が来るそうで、それで成り立っていると言ってました。島で生まれた子はほぼいなくなるそうです。
そこで生まれたから「ずっとそこで生きていく」というのはなかなか難しいですよ。今の時代は。やっぱり子どもたちはラウンドワンとかショッピングモールがあるところに行きたいですよ。
もし能登を残すなら「ここで暮らしたい」という人を集めるしかないですよね。
でしょうね。子供に跡を継がせるという発想ではもう無理ですよ。
半分以下になる自治体の中で生き残るには「ここに住みたい競争」に勝つしかない。
勝つしかない。おっしゃる通り。均衡ある国土の発展が田中角栄以来の自民党の大テーマだったんですけど。もうそれが成り立たない。
能登は素敵な場所なんですけどね。
人や技術をソフトウェアで伝承して残したらどうかって、もう地元でも意見が出てるんですって。
能登がなくなっても伝統文化は残せるように。地元の人はそこまで覚悟してるんですね。
人とインフラをどこに寄せるかってことをもう選ばないといけない。バラバラにどこに住んでもいいっていうのはもう難しい。それが現実なんですよ。
なぜはっきり言わないんでしょうね。
日本はシルバー民主主義だから。そんなこと言ったら誰も投票しない。本当は政治がバシッと決めないといけないんだけど、それができない。
俺の町を潰す気か!みたいになるんですね。だけど水面下ではもう進み始めていると。
今回の能登みたいに「まだ復旧できません」「もうちょっと時間かかります」とか言いながら粛々と減らしていくんでしょうね。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。