2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第319回「リストラの順番を間違えたクロネコヤマト」
クロネコヤマトが個人事業主の配達員3万人を切ったニュース。業務委託ではなく雇用じゃないかと揉めてるみたいです。
そもそもヤマトって佐川急便と比べると人件費が倍以上あるんですよ。
給料が高いってことですか?
いや、人が多すぎるんですよ。配達員の数は佐川もヤマトもそんなに違いはないんですけど。ヤマトって中間管理職がめちゃくちゃ多いんです。
そっちを整理すればいいのに。
できないんですよ。ヤマトって現場の配達員の方はすごく評判がいいんですけど。
はい。すごく丁寧なイメージです。
ところが法人契約をしようとすると途端にレベルの低い人間が出てくる。それが業績にも影響していて。売上は佐川より大きいんですけど営業利益率は3分の1以下。
なぜそんな無駄な人材を抱えてるんですか?
みんなにポジション・ポストを割り振った結果、頭が大きい組織になってるってことです。
頭を切らずに末端を切っちゃったからみんな怒ってるわけですか。
おっしゃる通り。
そりゃあ怒りますね。
やった施策はまず外注費の削減。3万人の業務委託にひとり年間300万円ぐらい発注しているみたいで。合計900億の外注費を切って浮かすと。
上の人材はそのままですか?
正社員も少しずつ今リストラしてます。とくにその中間管理職ですね。
まあ、そうなりますよね。
50代以上の人が余っていて。営業所の上に不要なポジションがいっぱいあるんです。現場をよくわかってない人が営業所に来て「おい、これどうなってんだ」みたいな。
いちばん迷惑なパターンですね。ないがしろには出来ないし。そこを整理していくと。
そう。あとは、ちっちゃい荷物を運ぶのはやめて、なるべく大きい荷物だけ自分たちでやる。小さいのはもう日本郵政に配達をお願いしてるんです。
だから現場の配達員も必要なくなって。
そういうことです。輸送はやるけど配達は日本郵政に投げる。大きな荷物だけはヤマトでやる。こういう施策でなんとか営業利益を戻そうとしてるんです。
戻せるんですか?
う〜ん。佐川とは営業利益が倍近く違うので。
売上はヤマトの方が大きいんですよね。
ヤマトの方が大きい。大きいのに営業利益は佐川の半分近く。
リストラする順番を間違えている気がするんですが。まずは要らない管理職が先じゃないですか。その次が給料の高い社員の配達員。年間300万の業務委託っていちばん利益を生み出すところじゃないですか。
そうなんです。ここにヤマトホールディングスの問題点があるわけですよ。佐川には余計な人間がいない。筋肉質なんです。配達員も筋肉質だけど組織も筋肉質っていう。
上手いこと言いますね(笑)
佐川は元々「人の2倍働いて3倍給与を取ろう」というのが創業時からのモットーだから。
そういうイメージです。
元々1人当たりの生産性は高いんですよ。
ヤマトさんは丁寧なイメージがありますけどね。
現場の評判はいいですよね。
はい。だけど評判のいい人たちを切ってしまったわけですよね。
そうなんですよ。本当は45歳以上の盲腸みたいな人材をリストラしないといけない。そして優良な業務委託をもっと増やすべき。
ですよね。普通に考えれば。
絶対そう。じつは佐川のウィークポイントは業務委託なんです。切っちゃったけどヤマトの強みはそこにあって。なんでここをもっと強化しようと思わなかったのか。
社会保険料もかからないし。
おっしゃる通り。ヤマトホールディングスはやることが逆のような気がします。
なぜこんなことになってしまったんでしょう。
創業者の小倉昌男さんはリストラ嫌いだったので。社員を切りたくなかったんでしょうね。
「人を大事にする」という企業カルチャーが順番を間違えさせたと。
そう。結果的に現場でいちばん稼いでくれてる人を切っちゃった。名経営者でしたけど時代の流れと合わなくなったんでしょうね。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。