2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第327回「新卒採用を見直そう」
内定式の後も採用活動をやり続ける企業が多いみたいですね。承諾後も4人に1人は辞退しちゃうそうで。
中小企業の新卒採用はちょっと厳しいでしょうね。
昔はここまでひどくなかったような気がするんですけど。
いや、変わりましたよ。何が変わったかっていうと就職しやすくなったってこと。これが1番です。
やっぱりそこですか。
絶対そこ。僕も大学3年生の長女がいますけど、決まらない心配なんてしてないですもん。実際ものすごくこだわらなければ決まりますよ。
確かにそこは変わりましたよね。バイトもすぐに見つかる時代ですから。
バイトなんて一瞬で決まります。新卒の正社員採用も氷河期とは全然違います。内定のありがたみが10分の1ぐらいに軽くなったと思う。
10分の1ですか。
人って苦労して取れた内定だから「とりあえず入社して頑張ろう」ってなるわけですよ。
間違い無いですね。やはり早期離職の原因はここですか。
就職しやすくなった。これが大きな原因の1つ目。
他にもありますか?
2つ目も見逃せないんですけど。それはあまりにも早期化していること。今ってもう大学3年生で内定が出るんですよ。26卒採用の内々定がもう出てる。
え!そうなんですか?
そうなんですよ。大学3年生の秋にもう内々定。それも複数もらってる。そんなに早く決めちゃって「やっぱ違うかな」って1年後に感じるのは当然ですよ。
内定もらっても「もうちょっといい会社ないかな」って活動しますよね。
それが意外とGMARCHクラスでも「就活に時間取られるの嫌だからさっさと決めたい」って層が増えてるんです。
そうなんですか?じゃあなぜ辞退するんですか。
内定式に行って目が覚めるわけですよ。
ほう。
内定式で「こんなにつまんない会社だったかな」「ちょっと違うな」って。そこから就活し直す人も結構いるみたいです。
そこからやり直しても結構いい会社に入れちゃうんでしょうね、今は。
いわゆる大手有名企業トップ100は無理でしょうけど。知名度はないけどいい会社なんていくらでもまだあるだろうし。
テレビ CMも採用目的の優良大手が増えましたよね。ビジネス的に考えると別にやる必要ないと思うんですけど。
はい。完全に採用目的ですね。準大手でも知名度がないところは厳しいんです。
そういう会社だったら10月以降でも入れちゃう可能性ありますよね。
おっしゃる通り。
すごい時代ですね。じゃあまとめると「就職しやすさ」「採用の早期化」が辞退者を増やしていると。
実はもうひとつありまして。3つ目は「新卒人材紹介会社」がものすごく増えていること。GMARCHクラスだと大学3年生で紹介会社が猛烈なアプローチをしてくるんですよ。
そんなことが起こってるんですか。
はい。学生も早く就活を終えたいから、紹介された5〜6社に面接に行って「もうこれで決めます」って。そういう層がすごく増えてる。
紹介会社ってめちゃくちゃ採用コストかかりますけど。それほどまでに新卒の採用コストが上がってるってことですね。
おっしゃる通りです。
求人広告を出すほうがお金がかかっちゃうとか。
その通り。ただ紹介会社経由だから「自分が選んだ」っていう実感値が乏しい。内定式で「ちょっとこの空間違うな」「顔ぶれ見てもちょっと違ったかも」「すみません、内定辞退させていただきます」「他の企業紹介してください」みたいな。
企業側は大変ですね。
僕の予想としては新卒一括採用って、だんだん形骸化してくるような気がします。
今のやり方はもう限界でしょうね。
はい。とくに中小企業はやり方を変えないと、もう無理でしょう。アルバイトからしっかり接点を持って社員にするとか。第2新卒に切り替えるとか。ターゲットを思いっきり絞り込むとか。
やっぱりそれしか無いですよね。
そもそも就業経験のない学生に「こんなにコストかけるべきなんだろうか?」って、もう一度ちゃんと考えた方がいい。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。