2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第327回「新卒採用を見直そう」
第328回「洋服の青山に見るスーツの未来」
洋服の青山が新たな試みとして「おしゃれなモード服」を売るそうです。
いわゆるオフィススーツを着る人がどんどん減ってきてますから。
何かしら工夫しないことには生き残っていけないですもんね。
おっしゃる通りです。
「仕事だから仕方なく買いました」「一番安いので済ませました」というスーツやネクタイは、どんどん売れなくなっていくんでしょうね。
いや、もう間違いないでしょう。僕は2024年に2回しかスーツ着てませんから。安田さんはゼロでしょ?
ゼロです。というか、そもそもスーツを持ってないです(笑)
お互いそれで咎められることもないわけですよ。
全くないですね。
スーツは恐らく和服業界と同じ運命をたどると思います。なくなりはしない、マーケットは0にはならないけど、好きな人しか着なくなる。
着物はもう趣味の世界になってますよね。
そうなんですよ。
「好きだからスーツ着る」って人しか買わなくなると。
趣味性で買う人と、どうしてもスーツを着なきゃいけない仕事の人と。たとえば和服だと旅館、料亭はもう制服なので。
確かに。
しゃぶしゃぶの「木曽路」もアルバイトの制服が和服なんですよ。ああいうところは需要があるわけです。
言われてみればそうですね。ちなみにスーツはどういう仕事で残り続けると思いますか。
たとえばホテルマンとか。ここは絶対にスーツに近いものを着なきゃいけない。
確かに。普通の会社員はどうなると思いますか?
金融系の一部を除いて全部ジャケパンになるんじゃないですか。
ジャケパンだったら青山ではなく、もうちょっと自分の好みが活かせるところで買うようになるでしょうね。
おっしゃる通り。今はネット通販もすごく普及してるので。
安くておしゃれな服がいっぱいありますもんね。
だから青山もオシャレ系にシフトしてるんでしょうけど。
上手くいくと思いますか?
う〜ん。僕はここで新しいマーケットを作るより、思い切って撤退戦を計画した方がいいと思う。
撤退戦ですか。
そう。年商はもう追いかけないで利益にこだわる。どんどん撤退して今の5分の1ぐらいの規模にして、利益は同じぐらい確保できるようにする。
そんなの株主が許してくれるんでしょうか?だって上場企業ですよね。
おっしゃる通り。だから上場廃止が必要なんじゃないですか。
そもそも規模を5分の1にして同じ利益って確保できますか?
大リストラが必要でしょうね。次の事業をやりたい人だけ残ってくれと。あとは全部責任持って再就職の面倒は見るから辞めてくれと。退職金も積みますと。
やはりそこまでしないとダメですよね。銀行員がネクタイしない時代ですからね。
しない。信用金庫なんて夏はポロシャツですから。それを別になんとも思わないわけですよ。今スーツをバシッと着てる人って外資系生保の営業ぐらいじゃないですか。
日本の伝統的大企業(JTC)はさすがにスーツネクタイでしょ?
いや、もうだいぶ崩れました。
え!そうなんですか。
はい。クールビズ以降、OKの範囲がすごく広がったイメージですね。夏がめちゃくちゃ暑くなったし。猛暑にスーツなんて着てたら命が危険ですから。
確かに。今までよく猛暑にネクタイ締めてましたよね。
ただ「きちんとしています」ってだけ。理にかなってないですよ。
あと何年くらいでスーツはオワコン化するんでしょうか?
地球がどれだけ熱くなるかと、新卒一括採用がどうなるか。それがこの業界を決定的に変えるトリガーだという気がします。
昔はスーツって学生の憧れでもあったんですけど。
おっしゃる通り。我々も若い頃はお金かけてスーツ、シャツ、ネクタイ、小物を揃えたじゃないですか。
今は全然おしゃれな感じがしないですもんね。言い方悪いですけど、安いスーツは「社畜の制服」みたいに見えちゃいます。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。