第334回「週休3日で生まれるもの、なくなるもの」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第333回「外資vs国内資本の攻防」

 第334回「週休3日で生まれるもの、なくなるもの」 


安田

小池百合子さんがまた大胆な都政改革をしてますね。公務員に週休3日を取り入れるって。

石塚

僕はもう10年近く前から「いずれ週休3日になる」ってずっと言ってたから。

安田

え!何を根拠に?

石塚

もう簡単な話で。僕らが小学生の時って土曜日は当たり前に学校だったじゃないですか。

安田

土曜日は昼過ぎまで学校でしたね。

石塚

でも、いつの間にか学校って週休2日になったじゃないですか。

安田

なりました。企業もそうでしたよね。

石塚

そう。企業もあっという間に完全週休2日が当たり前になって。この流れでいくと次は週休3日になっても全然おかしくない。

安田

さすがに生産性が下がりませんか?

石塚

週休2日の時もそう言われてたけど全く下がらなかったじゃないですか。実は週休3日の実験をアイスランドがやったんですけど生産性が25%上がったという。

安田

そのニュース見ました。休みが増えたのに逆に売上が伸びたっていう。

石塚

人間って働き続けるより、休んでリフレッシュした脳で考えた方が、生産性がアップするってことですよ。

安田

とは言え、どこかで限界は来るでしょう?

石塚

もちろん来るでしょうけど、週40時間を「1日10時間×4日」だったら全然いいじゃんかって。僕は結構これいいと思うんですよ。

安田

1日8時間×4日はさすがに無理ってことですか?

石塚

いや、段階的にそうなる。総労働時間自体も減ってくると思う。

安田

労働人口がどんどん減っていく中で労働時間まで減らすんですか?

石塚

だって正直、今のサラリーマンやOLは8時間分も仕事しないじゃないですか。本当に全力を尽くしてんのって3時間ぐらいですよ。

安田

確かに。そんなもんでしょうね。

石塚

そんなもんですよ。あとはもう喋ったり、右のものをただ左に動かしたり、ただエクセルつけたり貼ったりとか、そんなのばっかり。

安田

私自身もフリーランスになって実感してます。お客さんからお金をもらって仕事してる時間って1日3〜4時間ぐらいです。あとは商品開発の時間とか売るための工夫とか。

石塚

打ち合わせとか。

安田

そうそう。まあスポーツで言うところの練習時間みたいなもので。試合に相当する時間って3〜4時間ですよね。確かに。

石塚

会社員はもっと少ないと思う。だって100%他人事だから。

安田

その分サボらないように見張られてますけど(笑)

石塚

何が言いたいかというと、まず週休3日は可能だと。そして週休3日にすると、いよいよ兼業・副業が物理的に可能になる。

安田

総労働時間が減ったら副業する人は増えますか?

石塚

二極化するでしょうね。働かない人はますます働かなくなる。

安田

ダメじゃないですか(笑)昔は「働きすぎだ」「エコノミックアニマルだ」って叩かれていたのに、気がついたら日本人はどんどん働かなくなって。今や先進国で最下位の生産性ですよ。

石塚

生産性は上がると思います。上げられる会社しか生き残れないので、結果的に上がっていく。そして働く人と働かない人がはっきり分かれる時代になっていく。

安田

働かない人も上がっていくんですか?

石塚

収入という意味では上がっていくと思います。今の20〜30代って、頑張ってスキルアップしなくても転職するだけで上がっていくじゃないですか。

安田

だけど企業は省人化していくわけですよね?

石塚

いわゆるホワイトカラーの仕事はほぼ無くなるでしょうね。生成AIの仕事への侵食度がもう加速度的に増えてますから。

安田

AIを使うのも人間ですけど。

石塚

そう。だから無くなりはしない。ただ激減すると思います。例えば5人でやってた顧客対応が1人+AIで片付いてしまうわけです。

安田

なるほど。

石塚

残った人材にはより高い給料が払われる。安田さんも最近よく提唱されてるように、社員の年収はもう1000万が当たり前になりますよ。

安田

余った人材はどうするんですか?

石塚

明治維新みたいなもので「侍がなくなったから、みんな今日から違うことやってください」みたいになっていく。ホワイトカラーは必要なくなる。

安田

他の仕事に就くってことですか?

石塚

一部は副業から個人事業主として独立するでしょうね。残りはおっしゃる通り他の業界に移動していく。

安田

働く場所はあると。

石塚

いくらでもありますよ。これだけ人不足なんだから。求人が増えるってことは当然賃金の競争にもなるから賃金価格は間違いなく上がるんです。

安田

つまり仕事を選ばなければどんどん収入は上がっていくと。

石塚

上がっていく。そのきっかけが週休3日じゃないかと僕は思っているわけです。10年もかからないんじゃないかな。週休3日が実現するまで。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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