さよなら採用ビジネス 第87回「営業という職種の未来」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第86回『いちばん悪かったのは誰?』

 第87回「営業という職種の未来」 


安田

最近、日本全国で営業マンの数が減ってるらしいです。

石塚

ああ、はいはい。想像はつきます。

安田

ピークで468万人いたのが、いま336万人しかいないっていう。

石塚

へえ、そんなデータがあるんですね。

安田

どうしてだと思います?単に「営業」という肩書きを付ける人が減っただけなのか。それとも、もう「人間が売る」という仕事自体が減っているのか。

石塚

後者だと思いますね。

安田

これまでは「優秀な営業マンがたくさんいる会社=営業力のある会社=業績のいい会社」でした。

石塚

ですね。野村證券しかり、光通信しかり。

安田

そのモデルがもう成り立たないってことですか?

石塚

まずセキュリティやコンプライアンスの問題で、部外者が簡単に会社に入れない。大手町に飛び込みにいったって、ぜんぶ受付でシャットアウト。

安田

昔は「保険のおばちゃん」がオフィスの中でウロウロしてましたよね。

石塚

ああいうセールスはもう大企業ではできなくなりました。それだけでも大きいと思いますよ。

安田

石塚さんの予想では、今後はさらに「営業マン」と呼ばれる人は減っていきますか?

石塚

減りますね。減るんだけど逆にニーズは高まる。

安田

どういうことですか?

石塚

営業マンって100点の人もいるけど、40点ぐらいの人もいる。で、40点は40点なりに40点分ぐらいの売上をあげてきたじゃないですか。

安田

そうですね。

石塚

でもいまの時代って二極化してる。売れる人はすごく売れるけど、売れない人はまったく売れない。

安田

確かに。

石塚

売れない営業は「割増退職金払うから辞めてください」っていう時代。

安田

大手はそうなりつつありますね。

石塚

そうなると「腕がいい人」にニーズが集中する。そしてどんどん希少価値が出てくる。

安田

じゃあ本物の「プロ営業マン」は生き残ると。

石塚

残りますね。間違いなく。

安田

それってどのぐらいの割合なんですか?全体の1〜2割ぐらい?

石塚

うーん……営業って、ものすごく幅が広いので。

安田

まあ、そうですよね。

石塚

デリバリーと伝票付けだけでも「営業」って呼んだりしますし。

安田

それって営業マンとは言わないですよ。

石塚

いや一応、営業職ですね。ルートセールスという営業です。

安田

なるほど。じゃあ、どこまで含めるかによって営業マンの母数が変わってしまうと。

石塚

はい。難しいところですね。

安田

ルートセールスのような仕事は「もうネットでいいよ」ってことになりませんか。

石塚

おっしゃるとおり。そうなりつつあります。

安田

営業マンって、プロ野球選手と違って「まったく営業に向いてない人」でも、プロとしてお金をもらって来ましたよね。

石塚

はい。営業の世界って「セミプロ」と「アマチュア」だらけ。ほとんどそんな人しかいない。

安田

そういう人たちが営業という仕事から「どんどん外されていく」ってことですね。

石塚

会社にも雇う余裕がなくなってるし。仕組み化なり、SNSなり、ネットなり、スマホなりに、どんどん移ってる。

安田

ということは、スキルのある「本物の営業マン」は残っていくけど、「なんちゃってプロ」だった人たちは、どんどん仕事がなくなると。

石塚

そうです。

安田

仕組み化されて、要らなくなってしまう?

石塚

はい。

安田

「20年間営業しかやってません」みたいな人たちって、どうなるんでしょう?

石塚

もう、聞くだに目頭が熱くなってきます。

安田

どうしようもないと?

石塚

はい。残念ながら。

安田

でも世の中のいわゆる営業と言われてる人って、半分ぐらいはそんな感じですよ。

石塚

いや、もっと多いです。営業って、できない人は本当にできないので。

安田

事務職なら「できない」なりに何かの役には立ちますけど。営業って売れないと何の役にも立たないですよね。

石塚

まあ、デリバリーと納品と伝票を兼務して「営業」と名乗る人は、一定数残ると思いますけど。

安田

営業力がなくても?

石塚

商品がいいから「営業がダメでも売れる」っていうケースもあるので。

安田

まあ、ありますよね。

石塚

あと「シェアの大半を抑えてて、嫌でもここから買うしかない」ってのもあります。

安田

でも、それって営業と呼べるんですかね?

石塚

名前だけですね。形式上、便宜的に、営業という肩書きだけ付けておく。

安田

いま保険業界では店舗型が増えていて、「窓口で相談にのるだけの人」ってすごく給料が安い。

石塚

そうなりますよね。最低限の知識があれば誰でもいいので。

安田

「営業マンとしての価値はない」という判断ですよね。

石塚

おっしゃるとおり。

安田

これまでは「見込み客づくり」「商品説明」「クロージング」と、ぜんぶ営業マンがやってきましたけど。

石塚

これからは仕組みでほとんど吸収しちゃうでしょうね。

安田

商品説明なんて、ヘタな営業マンより動画のほうがよく分かるし。

石塚

商品説明が残るのは「売りづらい商品」だけ。そういう商品は人のスキルに依存してるので。

安田

まあ、人間が介在しないと売れにくい商品ってありますよね。

石塚

そこはどうしても、なくならないんじゃないかな。生命保険なんかも、人に依存する部分は大きいです。

安田

そうですか。

石塚

人生に直結してますからね。「おまえに言われたくないよ」って思われたら終わり。

安田

確かに。じゃあ損保とかは?

石塚

もう仕組みで十分ですね。

安田

ちなみにBtoBは「絶対に人間じゃなきゃ」って部分がありそうですけど。どうなるんでしょう?

石塚

いわゆる購買部門はネット取引がかなり進んでます。何らかの「気づき」や「プラスアルファ」を求める商品は属人的な営業が残るでしょうけど。

安田

BtoBの場合は「長い付き合いによる信用」で成り立ってる部分が大きかったですけど。

石塚

エリアによりますね。東京は関係性よりも性能や中身で決めていく。関西はどちらかというと「この関係をずっと維持したい」っていう圧が強い。

安田

なるほど。じゃあ地域によっては残るってことですか?

石塚

関係性を重視する会社はそうでしょう。ただし担当者が生きてる間だけでしょうけど。

安田

じゃあ死んだら終わり。

石塚

担当者が死ぬか配置換えしたら終わり。ジ・エンド。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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