さよなら採用ビジネス 第95回「ドミノが倒れ出す日」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第94回『社長の黄昏時』

 第95回「ドミノが倒れ出す日」 


安田

世の中の変化を見てると、会社で働くこと自体が終わっていきそう。

石塚

十分ありますね。もう経営者は雇用を増やさなくなるかもしれない。

安田

10年後には社会がガラッと変わってるかも。

石塚

10年もかからないですよ。今回のコロナショックで新卒一括採用にまったく違う角度からヒビが入った。合同説明会とか就職フェアにそもそも集まれない。

安田

ほぼ中止になっちゃいました。

石塚

結果的には歴史に残る「いい出来事」だと思います。

安田

みんな矛盾を感じながらやってましたからね。

石塚

惰性で続けてただけ。これを機に就活の方法が根底から変わる。

安田

どう変わりますか?

石塚

“らしさ”だったり“つながり方”みたいなものを重視するようになる。「ナビ」というフォーマット化された情報ではなく。

安田

これまでは、ナビの指示どおりにやってれば就職できましたから。

石塚

その流れがガラガラっと根底から変わる。

安田

今年の就職活動はどうなるんでしょう?前例がないので予想がつかないです。

石塚

数字的には全部下がると思います。求人数も下がるし、いつ終息するも分からない。昨年や一昨年と比べて就職が厳しくなることは確か。

安田

厳しくなるだけじゃなく、これを機に就職活動が根本から変わるってことですよね。

石塚

僕はそう予想してます。

安田

つまり来年以降、一気に合説が減ったり、スーツ着て就活する人が減ったり、ということが起こるかもしれない。

石塚

すでにそういう人は出始めてます。それが加速していく。この対談を読んでる学生に言いたいです。「リクルートスーツで合説行ってるキミ、もう遅れてるよ」って。

安田

じゃあどういう活動をすればいいんですか?

石塚

すでに会社を始めてる人もいますけど、法人化してなくてもいいので何らかの事業をやってみる。あるいは誰かに個人的に弟子入りする。

安田

弟子入りですか。

石塚

たとえば立教大学の新座キャンパスに「映像身体学科」という面白い学科がありまして。

安田

映像身体学科?そこは就職に有利なんですか?

石塚

そこって極端に就職率が悪いんですよ。

安田

ダメじゃないですか(笑)

石塚

なぜ就職率が悪いかっていうと、弟子入りしちゃうんですよ。映像だから監督とかに。

安田

なるほど。

石塚

今そこから少しずつ若手の映像作家が出てきてまして。

安田

へぇ。

石塚

だから単なる就職ではなく、そういう弟子入り型の働き方も考えるべき。

安田

どんなに安定した会社に入っても一生保障されるわけじゃないですから。

石塚

リストラの現状も見てるはずなので。

安田

それでも変わらない学生が多いというイメージですか。

石塚

だって、こんなコロナでも合説行ってる子とか。逆に「マジメな子だなあ」と思いますよ、ホントに。

安田

まあ、そうですね。

石塚

マジメさは買うけど「うーん……大丈夫?」って、ちょっと心配になる。

安田

働く側の意識も変わりつつあることはたしかです。

石塚

それは強く感じますね。

安田

そうなったとき、リクルートやマイナビなどの人材採用会社も、大きく変わっていくと思いますか?

石塚

変わらざるを得ないでしょうね。

安田

どうなっていくと予想してるんですか?

石塚

究極は、なくなる可能性もある。「そういう商売もあったね」って。

安田

なくなる?

石塚

そうなる可能性は十分あります。

安田

今のような新卒一括採用もなくなるってことですか?

石塚

そもそも、どの仕事をやらせるかも明確じゃない。年齢だけでポテンシャル採用とかって、無理があるんですよ。

安田

今後はどんどんスペシャリスト化していく?

石塚

そうでしょうね。いわゆるゼネラリストの終焉ですよ。

安田

そうなった時、いわゆる人材業界で仕事をしてる人たちはどうなるんですか?

石塚

「企業からお金をもらうモデル」での採用ビジネスは、もうやっていけないと思う。

安田

リクナビ・マイナビは過去最高業績って噂ですけど。

石塚

このコロナで相当株価は下がってますよ。

安田

投資家はあまり先行きに期待してないと?

石塚

もともと投資家は「にわかバブル」だと分かってる。

安田

リクルートやマイナビの社員さんたちって、そういう危機感があるんですか?

石塚

ないですね。

安田

ですよね。

石塚

彼らはむしろ「われわれが市場を動かしてるんだ」って鼻息が荒い。僕から見てたら「滑稽だな」って感じ。

安田

今後はどういう動きが出てきますか?

石塚

まず会社自体が相当減る。そして残った会社もこれまでのように雇用しなくなる。

安田

その可能性はありますよね。

石塚

「人手不足」って言ってたけど「もう人採らないよ」「人を減らしましょう」って会社が、これをきっかけに出てくる。

安田

経営者は「雇用のリスク」を目の当たりにしましたから。

石塚

それに伴って採用がメイン事業ではなくなる。何かの事業の「付帯サービス」として採用をやるようになる。

安田

ほぉ。では採用は無料化すると。

石塚

たとえばリクルートなんかは、もうべつに採用で利益が出なくてもいいわけですよ。

安田

まあ、そうですね。

石塚

ライフスタイル提案というビジネスモデルの中で「採用は全部無料にします」となる。そうなった途端にもう他はついていけない。

安田

リクナビ掲載費がある日突然0円になる可能性があると。

石塚

あると思います。ぜんぜん別のところでマネタイズする。

安田

じゃあ採用しかやってない会社はどうなるんですか?マイナビとか。

石塚

「リクルートが0円なのにお宅はお金取るの?」って話になる。

安田

そりゃあ、なりますよね。

石塚

そうなるとマイナビもゼロ円にせざるを得ない。

安田

ですよね。

石塚

マイナビがそうなると、学情も他の会社も全部ドミノ倒しみたいになっていく。

安田

で、どうなるんですか?

石塚

採用以外のマネタイズを確立したところだけが生き残る。

安田

厳しいですね。

石塚

何が厳しいかって、そうなると業界の壁がなくなる。AmazonやGoogleがある日いきなり競合になる。

 

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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