国を動かす役人、官僚とは実際のところどんな人たちなのか。どんな仕事をし、どんなやりがいを、どんな辛さを感じるのか。そして、そんな特別な立場を捨て連続起業家となった理由とは?実は長年の安田佳生ファンだったという酒井秀夫さんの頭の中を探ります。
第17回 「ブラック霞が関」の実態
へぇ。それが今や大企業と同じくらいバンバン辞めていると。
やっぱり辞める理由は「ブラック過ぎる」、つまり仕事が過酷だってことなんですか? 以前酒井さんも、「国のために一生懸命やっても国民からは評価されずやりがいを感じづらい」なんて仰っていましたけど。
なるほど。政策を作るって大変なんですね。でも、そうは言っても、役所の人だってちゃんと休まないと倒れちゃうわけで、そこは企業同様にちゃんとルールで守ってあげればいいような気がしますけど。
普通の企業だったら、「忙しいから人を入れてくれ」って言えるけど、役所はそうじゃないと。
ええ。厳密にいうと、課の定員も決まっているし、それを変えるのも大変だから「それは言っちゃいけないことだ」という感覚が染み付いているんです。自分の部署を増やすと、他の部署が減ることになる。誰も言えないから人は増えない。結果、「誰もやれる人がいないから自分がやるしかない」という発想になるわけです。
でも、官僚も雇用契約を結んでいるんですよね。雇用である以上、働いた時間に対してお金が払われているということで、ある程度線引きはできると思うんですけど。それをしないのは「エリートとしてのプライド」なんでしょうか。
ああ、そうか。いま官僚になっている人たちは、それをわかった上で入ってきていると。だとすると「じゃあなぜ辞めちゃうの?」って話になりませんか。
そうそう。もっとも時間外労働に関しては、きちんと残業代が払われるようになったんですけどね。
それで言うと、最近Twitterで「役所を辞めてコンサルに行ったら給料が倍になって、さらに役所の仕事を外注してもらって中身のある仕事ができるようになった」っていうツイートが話題になってるんですけど(笑)。
面白いですね(笑)。ネタかもしれないですけど、妙にリアリティがあります(笑)。
そうですね(笑)。大企業でも同じだと思うんですけど、内部の人間でしか処理できない、泥臭い仕事がたくさんありますよね。
ああ、そうですよね。トラブル処理やクレーム対応などは、どうしても社員がやらないといけないですもんね。
ええ。官僚も同じで、内部の人間はそういう仕事に多くの時間を使っている。一方で、政策立案に関する分析や調査って、外部のコンサルの人でもできちゃうんですよ。結果、内部の人は地味で辛い作業をやり、外部の人がキラキラしたやりがいある仕事をやっている、という状況になっているのかもしれません。
なるほどなあ。割と根深い問題なんですね。官僚を目指してくれるような方に、いかにやりがいある仕事を任せられるかが今後の課題になりそうですね。
対談している二人
酒井 秀夫(さかい ひでお)
元官僚/連続起業家
経済産業省→ベイン→ITコンサル会社→独立。現在、 株式会社エイチエスパートナーズ、ライズエイト株式会社、株式会社FANDEAL(ファンディアル)など複数の会社の代表をしています。地域、ベンチャー、産官学連携、新事業創出等いろいろと楽しそうな話を見つけて絡んでおります。現在の関心はWEB3の概念を使って、地域課題、社会課題解決に取り組むこと。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。