第117回「やっていることをちょっとずらしたら新たなビジネスとなった小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「やっていることをちょっとずらしたら新たなビジネスとなった小さなブルーオーシャン」


「製本会社の新しい挑戦」

「製本」に特化した
企業があるのをご存知だろうか?

印刷会社が紙に印刷して
1枚のシートにしたものを
切って折って綴じて、
最終的な本の形に仕上げ、
カバーや帯をかけたり
スリップ(短冊型の売り上げカード)を
さしたりして、出版社の倉庫に
納品するのが製本会社です。

東京都江東区に
有限会社篠原紙工
という会社があります。

この会社、
ただ製本をする会社では
ないのです。

通常の本であれば、
縦横がきっちりしています。
そうじゃなければ、
本として販売はされないでしょう。
ところが、
通常の本のように縦横がきっちりと合っていない。
無造作に、「いいかげん」な感じで折られている。

「いいかげん折り」

製本に使う折り機は、
水平と垂直にしか
折れません。

機械を斜めにしたり、
角度をつけたり、
何度もテストをして
失敗を重ねながら、
ようやく斜めに折りつつも
きっちりと本の形に
することができたんだそうです。

他社が「できない」という仕事に、
あえて挑戦するんだそうです。

電子書籍も変わっています。

Perfecto_CapucineによるPixabayからの画像

普通、電子書籍と言えば、
タブレット端末やPC、スマホなどで
読むのが“通常”です。
ところが、有限会社篠原紙工の
手掛けているのは、
まるで豪華な紙の本のような形をしていて、
開くと液晶画面が現れる。
この中に全12巻のデータが
入っているといいます。

まさに、紙の本のような「電子本」。

紙の本を買った時の
「所有した」という満足感と
圧倒的な情報量をコンパクトに
まとめるという
充実感があります。

製本とは全く関係ない
こともしています。

紙と金箔でつくられた
アクセサリー
を作っているのです。

伝統的な製本技術を活かし、
一枚一枚の紙の淵に金箔を塗って、
手作業で大切に組み立てている
と言います。

一つ一つ丁寧に作られた
紙製アクセサリーは、
日本国内だけでなく
台湾や香港、
ヨーロッパでも
販売されているそうです。

発注者の言うがままに
モノを作っているだけでは
ただ単に「早く・安く」といった
請負仕事をやるだけなってしまいます。

自社の仕事をちょっとずらしてみたり、
しっかりと強みを認識したりすることで、
新たな可能性を生み出すことができます。

できることをコツコツやることも
大事ですが、たまには大胆に、
舵を切ってみることも必要だと
思わせてくれる小さなブルーオーシャン
だと思います。

───────────────────

有限会社篠原紙工
〒136-0072 東京都江東区大島5-51-13
URL http://www.s-shiko.co.jp/

───────────────────

著者の他の記事を読む

 

佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

感想・著者への質問はこちらから