営業のゆくえ

営業という肩書きはなくなる。
私がそう予言してから10年以上が過ぎた。
いまだに営業という肩書きはなくなっていないようだ。
残念ながら現時点で予言的中とは言えない。

だが確実にその数が減ってきていることに、
賛同してくれる人は少なくないだろう。
たとえば採用における職種名の変化。
これは20年以上前から起こっている。

いわゆる企画営業という職種の誕生である。
営業は不人気職であり企画は人気職種である。
だったらそれにあやかろう。うちの営業は
企画力も使うのだから立派な企画営業である。

そうやって、企画書という名の
単なる見積書を持っていく営業マンが、
企画営業職と呼ばれるようになった。
もうバレバレであるが、
いまだにこの職種を使っている会社は多い。

営業をやりたくない理由を尋ねると
「必要ないものを売りつける仕事」だから、
という答えが多い。
それはもちろんイメージでしかない。
本当の営業はもっと奥深い。
私だってそう思う。

だがイメージはとても重要である。
求職者にとって営業はマイナス言葉なのだ。
では買う側から見たらどうだろう。
「営業担当の〇〇です」と紹介されて
違和感を感じる人はいなかった。
だがその状況も変わりつつある。
なぜなら人は売られることが嫌いだから。

営業とはお客さまのコンシェルジュである。
課題を解決するスペシャリストである。
ベストな企画を練り上げるプランナーである。
などなど、言い訳のように並べ立てる経営者は多い。
それはつまり「単なる物売りではないぞ」
という想いがあるからだ。

単なる物売りだと思われたくない。
顧客も単なる物売りは求めていない。
だったら役割どおりに「コンシェルジュ」
「プランナー」と名乗ればいい。
だが経営者は営業という肩書きにこだわる。
なぜなら「君の仕事は売上をあげること。
それが本業だということを忘れるな」と思っているから。

つまり売り込みたいのである。
だがこの気持ちを捨てない限り、
現代の消費者には必ずバレる。
そして売れなくなっていく。

売るための努力。そこにかかる広告費や人件費。
それを負担するのは顧客である。
利益率の高い商品を営業力で売る。
言い換えると「安い商品を営業力で高く買わされる」
ということになる。

もはや単なる言葉の問題ではない。
本気で営業をやめるべき時だ。
売らずして売れていく。
だから価格競争力が上がる。
結果的に顧客に選ばれる。
もう時代は変化している。

 

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