第139回「名前を変えて売ったら売上伸長率17倍という小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「名前を変えて売ったら売上伸長率17倍という小さなブルーオーシャン」


「”三陰交をあたためる?“意味が通じず売れない商品」

売り方や使い方を変えて売ることを、
「マーケティングマジック」
というんだそうです。

専門的なことはさておき、
世の中には、ちょっと変えたら
爆発的に売れたという商品が
たくさんあります。
例えば、「シュレッダーはさみ」。
文具店に行くと、
刃が何枚も付いているハサミが
売られています。
重要文書等を細かく裁断してくれる
ハサミなのですが、これ、元々は
刻み海苔用のハサミとして
販売されました。
刻み海苔用のハサミとしては全く売れない。
そこで、シュレッダーはさみとして
再販したら爆発的に売れた、
という事例です。
この例は、使い方を変えた例ですが、
今回はネーミングを変えたら
爆売れしたという事例です。

国内トップの靴下専業メーカー
岡本株式会社。

東レ、東洋紡、岡本の
3社共同開発の特殊保温・発熱素材を使用し、
今までよりあたたかい靴下を実現した
冷え対策の靴下を商品化します。
さらに、独自の技術で足首にあるツボ
「三陰交」を温める機能を持たせ、
渾身の新商品
「三陰交をあたためるソックス」
が完成、販売されることとなります。

ターゲットはシニア層。
パッケージデザインも
わかりやすくしたそうです。
ところが、思うように売れませんでした。

s-wloczyk2によるPixabayからの画像

この商品は、機能をウリにして
販売し始めたわけです。
つまり、独自開発した技術や素材、
それを顧客にどうしても
伝えたいという想いが先行したのでしょう。

このケースって結構あると思います。
しかし、顧客が求めているのは
技術の高さや素材の素晴らしさだけでは
ありません。
このことに気づいた同社は、
業界ではありえない新しい試みに
挑戦しています。

それは、

“商品が触れない”

ということ。
つまり、靴下を袋に詰めて
あえて触れないようにしたと言います。

そしてネーミング。
わかりやすさを重点において
「まるでこたつソックス」

袋に詰められ、
「まるでこたつソックス」
と書かれた靴下が商品として並んでいる。

どんな暖かさなのか?
肌触りは?
履き心地は?

触って確かめたい!
と好奇心がくすぐられます。
触れないと不安で買えない、
という人もいるでしょうが、
それ以上に履いてみたい、
という気持ちが勝ったんでしょうね。

「三陰交をあたためるソックス」から
「まるでこたつソックス」に名前を変えて、
売上伸長率は17倍以上を記録したそうです。

私たち販売する側は、
どうしても伝えたい想いがあります。
その想いが溢れかえっています。
それは間違いではないと思いますが、
購入者の立場に立ってみると、
その想いは、重たいのかもしれません。
わかりづらいのかもしれません。

中身を変えたわけではなく、
ネーミングを変えただけで売れた
小さなブルーオーシャンでした。

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まるでこたつソックス
URL https://shop.okamotogroup.com
岡本株式会社
本社:大阪市西区西本町
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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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