第152回「約20年経験を持つ訪問看護師がイチから企画してつくりあげた小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「約20年経験を持つ訪問看護師がイチから企画してつくりあげた小さなブルーオーシャン」


「看護の視点を盛り込んだ指導のしやすいシミュレーター」

 

2012年4月
「介護職員等による
喀痰吸引等
(たんの吸引・経管栄養注入)
についての制度」
というものが始まりました。
つまり、介護福祉士及び
研修を受けた介護職員などは、
一定の条件の下に
たんの吸引等の行為を
実施することができるように
なったわけです。

どの業界でもそうですが、
急に始まる制度というものは
現場を混乱させるわけです。
当然、この時も現場は大混乱
だったらしく、
研修に申し込んでも
受講できないという状態
だったそうで…。

何が問題だったのか?

それは、受講で使う、
シミュレーター不足。
現場に必要なことは、
知識よりも技術。
技術を得るための
シミュレーターが
圧倒的に足りなかった
わけです。

そこで立ち上がったのが、

現在、「株式会社ナースあい」の
代表取締役 多田真寿美氏。

この多田氏は現役の看護師。

日頃講習で説明していたことを
すべて視覚化できるように工夫した
シミュレーターを試作。

しかし、簡単に商品化できるほど
甘くはありません。
価格の問題から材料の見直し、
製造体制の問題、
販売活動の問題、などなど。

それらを一つひとつクリアして
完成したのが、
身近に練習できる
安価なシミュレーター
「メディトレくん2」、
2014年の発売以来、
約3600台が全国で活躍している
と言います。

その後も医療現場の悩みから
生まれた製品を次々開発。

医療従事者でも
苦手意識を持つ人が多い
末梢静脈注射の練習用の
「注トレくん」

JamesReinによるPixabayからの画像

救急救命の医師たちと共同開発した
医師とカテーテル挿入技能を
認められた看護師のために
技術習得を目的とした
練習ツール「注トレくんDR.」

同社の製品に共通するのは
「手軽にどこでも練習でき、
なおかつリーズナブル」

医療のように
高度な技術が
必要な業界では、
一度や二度の研修を
受講して終わり
というものではなく、
継続してトレーニングが
必要なのでしょう。
しかし、トレーニングに
必要な製品は
意外と大型で高価、
さらには、一部の病院や大学、
トレーニングセンターが
所有しているくらいで、
多くの医療・介護従事者の
練習する機会が
なかったのだと思います。

もっと言えば、
これからの時代は、
セルフケア・セルフマネジメントの時代。
医療・介護従事者に任せきりではなく、
個々の家庭においても
できることは自分たちの手で行なう。
そんな世の中に、
「手軽にどこでも練習でき、
なおかつリーズナブル」
というのはマッチしていくのでは
ないでしょうか?

高度なものをわかりやすく。
高価なものはリーズナブルに。
特別なものを手軽に。
(この逆もあるのですが…)

常識や業界の慣例に囚われず、
逆説的に考えると、
道は開けていけるのかもしれません。

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株式会社ナースあい
兵庫県神戸市中央区
URL http://www.nurse-i.com
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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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