休めない動物は人間だけ
病気にならないためには、自己受容と自己肯定のどっちが大事なんですか。
もちろん自己受容ですね。前提がなくなったら、がんばれなくなったら、自己肯定できなくなるじゃないですか。
みんな自己肯定するために必死に頑張ってます。だけど「大事なのはそこじゃないよ」ってことですね。
私はそういうふうに考えています。
現場ではどうやってサポートしていくんですか?
まず感じる力を取り戻す。しっかり感じられるように。自分の感情が分からなくなってる人が多いので。
自分の感情がわからない?
多いですよ。
「自分がいま悲しい」ということが分からないってことですか。
はい。めちゃくちゃ多いです。
え!そうなんですか?悲しくても悲しくないふりをしているとか。
表面的な感情とは別に、抑圧している感情をみんなもっています。「私、こんなこと感じてたんだ!」ということだらけです。
「自分の感情を無視して」生きてるってことですか。
それがいちばんのストレスで病気につながると私は考えています。
そんなところに病気の原因があるんですね。
あくまで私の考えですけど。なぜ確信をもって言えるかというと、「ポリヴェーガル理論」という自律神経の新しい理論があって。
ポリヴェーガル?
自己否定って神経レベルで体に影響を与えるんですよ。体としてはメッセージを出しているのに、それをキャッチしないとやっぱり病気になります。
「体のメッセージ」というのは感情のことですか。
そう。そして、感情って必ず体の変化を伴うものです。
体の変化を伴う?
「悲しい」とか「怒り」とか、明確に言語化できないような感覚も含めて、体はいっぱいメッセージを出してるんです。
へえ〜。
たくさんのプロセスを経て外に出てくるものですけど。だから気持ちや感情だけじゃなく、体で起こっていることも気づけるようにサポートしてます。
感情に気づけなくなっちゃった人は、「自分の体の声が聞こえない人」ってことですね。
そう、自分の声が聞こえない。
だから体が欲してないものを食べちゃったりする。ストレスで。
疲れていても頑張ってる犬とか、いないじゃないですか。
見たことないです(笑)
動物は疲れたら休むから。でも人間って、疲れていることに気づかないで頑張っちゃう。
疲れても頑張っちゃうのは人間だけなんですね。
そうなんです。
でも会社って、そういう頑張りで支えられてるじゃないですか。
「個人」「私」が大事にされない会社や働き方は、もう持続可能ではないと思う。
そういう会社のほうが儲かってたりします。上場していたり。
「僕はストレスに強いんです」っていう部長とか役員の人とか、よくいるんですけど。感じる力がないんだと思います。
なんと(笑)
「それをバネに生きてきた」って、自分を正当化しているだけで。感情にフタをしないと上に行けないし、上に行っている人が同じことを下にも求めます。
そういう会社はもう持続可能ではないと。
昭和の時代まではよかったかもしれない。でも、これだけメンタル不調の人が増えていて、もはや持続可能な組織ではないと思います。
> 第7回「 なぜ人はメンタル不調になるのか 」へ続く