「休めない動物は人間だけ」|センパイ先生と対談シリーズ

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上谷 実礼(うえたに みれい)
・平成12年(2000年)3月千葉大学医学部医学科卒業
・千葉大学医学部附属病院などで臨床研修
・平成16年4月千葉大学大学院医学研究院助手(環境労働衛生学)
・平成19年4月千葉大学大学院医学研究院助教(環境労働衛生学)
・平成22年労働衛生コンサルタント(保健衛生)試験合格
・平成22年5月千葉大学大学院医学研究院講師(環境労働衛生学)
・平成23年4月ヒューマンハピネス株式会社設立 代表取締役就任
・令和3年 公認心理師 試験合格

休めない動物は人間だけ

安田
安田

病気にならないためには、自己受容と自己肯定のどっちが大事なんですか。

上谷
上谷

もちろん自己受容ですね。前提がなくなったら、がんばれなくなったら、自己肯定できなくなるじゃないですか。

安田
安田

みんな自己肯定するために必死に頑張ってます。だけど「大事なのはそこじゃないよ」ってことですね。

上谷
上谷

私はそういうふうに考えています。

安田
安田

現場ではどうやってサポートしていくんですか?

上谷
上谷

まず感じる力を取り戻す。しっかり感じられるように。自分の感情が分からなくなってる人が多いので。

安田
安田

自分の感情がわからない?

上谷
上谷

多いですよ。

安田
安田

「自分がいま悲しい」ということが分からないってことですか。

上谷
上谷

はい。めちゃくちゃ多いです。

安田
安田

え!そうなんですか?悲しくても悲しくないふりをしているとか。

上谷
上谷

表面的な感情とは別に、抑圧している感情をみんなもっています。「私、こんなこと感じてたんだ!」ということだらけです。

安田
安田

「自分の感情を無視して」生きてるってことですか。

上谷
上谷

それがいちばんのストレスで病気につながると私は考えています。

安田
安田

そんなところに病気の原因があるんですね。

上谷
上谷

あくまで私の考えですけど。なぜ確信をもって言えるかというと、「ポリヴェーガル理論」という自律神経の新しい理論があって。

安田
安田

ポリヴェーガル?

上谷
上谷

自己否定って神経レベルで体に影響を与えるんですよ。体としてはメッセージを出しているのに、それをキャッチしないとやっぱり病気になります。

安田
安田

「体のメッセージ」というのは感情のことですか。

上谷
上谷

そう。そして、感情って必ず体の変化を伴うものです。

安田
安田

体の変化を伴う?

上谷
上谷

「悲しい」とか「怒り」とか、明確に言語化できないような感覚も含めて、体はいっぱいメッセージを出してるんです。

安田
安田

へえ〜。

上谷
上谷

たくさんのプロセスを経て外に出てくるものですけど。だから気持ちや感情だけじゃなく、体で起こっていることも気づけるようにサポートしてます。

安田
安田

感情に気づけなくなっちゃった人は、「自分の体の声が聞こえない人」ってことですね。

上谷
上谷

そう、自分の声が聞こえない。

安田
安田

だから体が欲してないものを食べちゃったりする。ストレスで。

上谷
上谷

疲れていても頑張ってる犬とか、いないじゃないですか。

安田
安田

見たことないです(笑)

上谷
上谷

動物は疲れたら休むから。でも人間って、疲れていることに気づかないで頑張っちゃう。

安田
安田

疲れても頑張っちゃうのは人間だけなんですね。

上谷
上谷

そうなんです。

安田
安田

でも会社って、そういう頑張りで支えられてるじゃないですか。

上谷
上谷

「個人」「私」が大事にされない会社や働き方は、もう持続可能ではないと思う。

安田
安田

そういう会社のほうが儲かってたりします。上場していたり。

上谷
上谷

「僕はストレスに強いんです」っていう部長とか役員の人とか、よくいるんですけど。感じる力がないんだと思います。

安田
安田

なんと(笑)

上谷
上谷

「それをバネに生きてきた」って、自分を正当化しているだけで。感情にフタをしないと上に行けないし、上に行っている人が同じことを下にも求めます。

安田
安田

そういう会社はもう持続可能ではないと。

上谷
上谷

昭和の時代まではよかったかもしれない。でも、これだけメンタル不調の人が増えていて、もはや持続可能な組織ではないと思います。

 

 > 第7回「 なぜ人はメンタル不調になるのか 」へ続く

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