スケッチ 第1回「隠れたブルーオーシャン」

戸谷: 安田さんと同じで、みんな建築士は描けると思ってるじゃないですか。

安田: そりゃあ、思いますよ。

戸谷: じつは描けないんです。この先どんどん描けなくなります。

安田: それはどうして?

戸谷: 理由は1つで、手でスケッチしてた時代には、嫌でも下手な人でも描かなきゃいけなかった。でも今はもう、描く必要がないんですよ。

安田: それはCADとかパソコンがあるから?

戸谷: そうです。システムも素材も山ほどあるんで。だからどんどん描けなくなる。

安田: なるほど。

戸谷: 私も住宅業界でやるのは抵抗あったんですよ。「嫌だなぁ、俺よりうまい人いたら」みたいな。

安田: でも実際はいなかった?

戸谷: 「この人は習う必要ないんじゃないか」って思ったのは、1,000人のうち2人ぐらいですね。

安田: じゃあ他の業界だったら、尚のこと効果がありそうですね。

戸谷: 住宅ですら、かなりインパクトがありましたから。

安田: たとえば採用業界の営業シーンで「こういう会社説明会をやりましょう」って、絵を描いて説明できる人っていないと思うんですよ。

戸谷: いないでしょうね。

安田: だから、ものすごく際だった価値になる。

戸谷: 絵を描けるって、想像する以上の効果があるんですよ。

安田: 絵とかデッサンとかスケッチって聞いただけで「あ、俺は関係ない」って思う人がいるじゃないですか。

戸谷: そういう人ほど、際だった価値が出ると思いますね。

安田: ですよね。人前でしゃべるのが苦手と言ったって、0点の人はいないですよ。でも、絵に関しては本当にゼロに限りなく近い人が多い。

戸谷: そうなんです。だから圧倒的な差別化になるんですよ。

安田: 実際、絵が描けるとどういうことが起こるんですか?

戸谷: まず信頼感が圧倒的に増えます。

安田: 信頼感ですか?

戸谷: はい。「わざわざこのために描いてくれた」感がすごく出るんです。私のために時間をかけて、下手でも一生懸命描いてくれた、みたいな。

安田: じゃあ、ちょっとくらい下手でもいい?

戸谷: だって、描いてくれる人なんて、他にはいないわけですから。

安田: まあ、そうですよね。せいぜい後で議事録送ってくるくらいですよね。

戸谷: 1枚の絵にして「パッと一目でわかる状態にして」置いて行ってくれる人なんて、まずいません。

安田: でしょうね。

戸谷: 文字だけのレポートだと、見てもよくわからない人って多いんですよ。

安田: 絵で見せると理解力も高まりますか?

戸谷: はい。イメージと違うなら「違う」ってすぐ言えますし、勝手な解釈をされることもない。

安田: 勝手な解釈ですか?

戸谷: たとえば「リンゴを切り分けてください」って言っても、それぞれ勝手なイメージを持つじゃないですか。

安田: 切り方とか?

戸谷: はい。でも絵で描くと、「あれ?そういうこと?」みたいな。「俺、違うと思ってた」みたいなのがすごくあります。

安田: なるほど。

戸谷: あとは持ち帰れる情報の量とか、伝達する量が、圧倒的に違いますね。

安田: 情報の量ですか?

戸谷: 絵に描いたものと聞いたものって、ぜんぜん情報量が違うんですよ。たとえばリンゴの切り方を言葉で説明するとなったらたら、たぶん10分では無理です。

安田: 無理でしょうね。

戸谷: 知り合いに相談するときとか、紹介とかにも活きてきます。

安田: 紹介ですか?

戸谷: はい。「こういうのを描いてくれた、わかりやすい営業マンがいる」って見せるだけで「その人紹介して」ってなります。

安田: 確かに。言葉で言うよりずっと紹介しやすいですもんね。

>>>次回は、テキスト通りに行えばスケッチのスキルは必ず身につく!?

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