地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第15回 大学講師もしているケーキ屋さん

そうなんですよ。『広島修道大学』と『広島文化学園大学』の2つの大学で、講義をしたりゼミを受け持ったりしています。

『広島修道大学』では、マーケティングや経営、商店経営を学んでいる学生さんに向けた講義・ゼミをしています。僕たちのような「個人店」がどうやって商品開発をしているのか、ケーススタディをお見せしたりして。

初回のゼミではまず、僕が普段どうやって「商品開発のためのネタ」を集めているのかを話したりして。例えば『百年のロールケーキ』だったら祖父の代からの「歴史のストーリー」を使って商品の開発をしたんだよ、とか。

他にも「食べる時間を、つながる時間に。」という会社の理念から『パルティータ』という商品開発したという話とか、広島産の素材から商品を考えていくアプローチもやってみたよ、という話をしたり。主に「商品開発」にフォーカスした講義をしていますね。

そうなんですよ(笑)。でも学校の先生って、学生時代はずっと教員になるための勉強をしていますよね。で、免許取って採用試験に受かったら、22歳かそこらで「先生」になってしまう。でももう少し「社会の成り立ち」といったことも学んでおくといいのでは、というのが狙いです。

はい。毎年テーマやシチュエーションを決めて、商品を考えてもらいます。例えば、自分たちが教育実習でお世話になる小学校に持っていく手土産を考えてみたり、大学の学祭で売れるのはどんな商品かを考えてみたり。自分たちで商品名や値段も考えてポップを作ったり、呼び込みして販売したり…。もうかれこれ5年くらいはやっていますね。

そんなに長くやられているんですか! ちなみにその2つの大学で開発した商品は『スギタベーカリー』で売らないんですか?

あ、期間限定で置かせてもらったりしてます。例えば『バイカラーコロネ』という商品で、チョココロネのチョコの代わりに、広島県産の色々な果物を使ったクリームを詰めたものだったり、他には広島県産の米粉を使っておにぎりの形にして、中にもおにぎりの具材を入れて焼き上げた『おにぎりパン』なんかもそうです。

だと思いますね。さらにおもしろいのは、ウチのショーケースに並べる前に、まずは学祭で販売したんです。で、買いに来てくれた学生や保護者の反応をみながら、どう改良すればスギタベーカリーでも売れそうか、みたいなことを一緒に考えまして。これは僕にとっても刺激的な経験でしたね。

あはは、そうですよね(笑)。もちろん理由はあって、まず1つは、学生さんから出てくるアイディアの面白さとか奇抜さみたいなものに魅力を感じるから。僕らが思いつかないところからアイディアを引っ張ってくるんですよ、みんな。

リクルート的な意味合い、ですね。講義やゼミを通じて大勢の学生さんと直接話をする機会がありますよね。で、その中の1人でもいいからウチのお店に興味を持ってくれる人がいて、ウチで働いてみたいって思ってくれれば嬉しいなぁと思っているんです。

なるほどなぁ。自分自身の勉強と、リクルーティングを兼ねているわけですね。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。