地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第17回 東広島で「独立支援の店舗」をオープンさせる理由

スギタさんのお店から、社員さんが独立することになったとお聞きしました。お店はいつOPENなんですか?

まず一番は、ケーキを並べるショーケース。あれ、200万円します(笑)。あとは、オーブン、冷蔵庫、高圧の食器洗浄機、急速にお菓子を冷やす機械、パイを伸ばすパイローラー、ミキサーなどなど。100万円くらいのお金がポンポンッと出ていっちゃう(笑)。

そうなんですよ。それもあって独立してイチからお店を作ろう、って人は少ないんです。そもそもこの業界って、ゴールが「独立」か「きっぱり辞めるか」しかないんですよね。ウチで働いていたスタッフの中にも、今は全然違う仕事をしている方が多いですから。

ケーキが作れる事務職、ですか(笑)。なんだかもったいない気もしますね。ちなみに今回の社員さんに対しては、スギタさんが「独立支援」をしたって仰ってましたよね。それはどういういきさつだったんですか?

先ほどお話したとおり、彼女は新卒入社したときから「いつかは鳥取で自分のお店を構えたい」と思っていたんですけど、なかなか踏ん切りがつかなかった。じゃあ、例えば広島市内で僕らがお店を作って、そこを「個人事業主」として運営するのはどうかな、という話になったんです。

そうですそうです。ある程度は僕らが関与できる余地がある状態を残しながら、彼女自身にお店をゼロから切り盛りするということを1度やってもらおうと思って。で、その経験をもとに鳥取に戻って完全独立するも良し、広島に残ってこのお店を続けたいということであれば店舗を買い取ってもらうも良し、としました。

ウチにいる他の社員が引き継いでやってもいいですし、外部の方でも「お店をやってみたい」という方にお任せするのも全然アリだと思っています。

いえ、東広島市なんですよ。本当は広島市内が良かったんですが、金銭面でも環境面でも「これだ!」と思えるような物件が見つからなくて…。数年単位で探していましたが、結果的に想定以上に遠い場所になっちゃいました(笑)。

でも東広島って広島大学がありますよね? 卒業生のスギタさんにしてみたら、そのあたりは第二の故郷みたいなもんじゃないですか(笑)。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。