第21回 シュトーレンが売れるのは、パン屋? ケーキ屋?

この対談について

地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。

第21回 シュトーレンが売れるのは、パン屋? ケーキ屋?

安田

私、シュトーレンが大好きで、クリスマスシーズンには必ず買っているんですが、あれってパンとスイーツのどちらなんですか?


スギタ

「イースト菓子」という分野なので、分類で言えばスイーツですね。

安田

ということは、ケーキ屋さんで売っているものが「正統派」だということですか?


スギタ

うーん…必ずしもそうとは言えないですね。というのも、シュトーレンってイーストを使って発酵させて作るんですけど、温度管理とか発酵管理をしなくてはいけないからケーキ屋で作るのはかなり難しくて。

安田

そうか、イーストの扱いは、むしろパン屋さんの方が長けているわけですね。普段から使っているものだから。


スギタ

そうですそうです。だからシュトーレンって、いわば「パン屋だから作れるお菓子」とも言えるのかなと思います。

安田

なるほどなぁ。じゃあスギタさんのところでも、パン屋さんの方だけで販売しているんですか?


スギタ

『スギタベーカリー』でも『ハーベストタイム』でも売り場には出してますね。ただ、製造はパン屋の方でしています。

安田

なるほど、パン屋さんで作ったものをケーキ屋さんに持っていって販売しているわけですね。ちなみに値段は同じなんですか?


スギタ

ええ、どちらの店舗でも同じ値段ですよ。味のバリエーションとか中身の具材にもよりますが、だいたい毎年2,500円くらいで販売しています。

安田

そうなんですね。うちの近くにもシュトーレンを扱っているパン屋さんがあるんですが、パン屋さんで2500円のものを買うって、ちょっと勇気がいるじゃないですか(笑)。ケーキ屋さんだったら「まあ、こんなもんだろうね」と思えるのに(笑)。


スギタ

ああ、わかる気がします(笑)。ケーキ屋と比べて、パン屋ってリーズナブルな商品が多いイメージがありますもんね。

安田

まさにそうなんです。だからケーキ屋さんの方が高く売りやすいんじゃないのかなぁ。というか、私の感覚ではケーキ屋さんの方が「本格的なシュトーレン」を作っているイメージがあるんですが、そういうわけでもないんでしょうか?


スギタ

それはおそらく、ケーキ屋だと「ちょっと強気の値段設定でも売れる」から、いい材料をふんだんに使ったものが売られているんじゃないですかね。ドライフルーツもたくさん入れられるし、アーモンドもこだわりのものを使えたりして。

安田

なるほどなるほど。逆にパン屋さんではあまり高い値段じゃ売れないから、材料も「それなりのもの」を使うしかない、というわけですね。


スギタ

仰るとおりです。もちろんパン屋さんで高級シュトーレンを売ったっていいわけですけど、パン屋さん側の心理として「あまりにも高い値付けをすると売れない」と考えている部分はあると思いますね。

安田

ふーむ。それならばいっそのこと、「パン屋さんで売るシュトーレン」と「ケーキ屋さんで売るシュトーレン」と分けて作って、それぞれ価格も変えるのはどうですか?


スギタ

あぁ、それはアリかもしれませんね。確かにパン屋とケーキ屋で販売チャネルが違うんだから、それぞれのお店独自のシュトーレンを作るのは面白そうです。

安田

ぜひやってみてください(笑)。というか私はスギタさんのところのシュトーレンが、今まで食べてきた中で一番だと思っていて。味に妥協がないし、王道ど真ん中、というところが好きなんですよね〜。


スギタ

あ〜嬉しいなぁ。ありがとうございます!

安田

なかなか広島までは買いに行けないので、早く通販をしてくれないかなぁと思っているんですけど(笑)。


スギタ

「通販もできればいいよね」という話はしているんですが。おかげさまで年々人気商品になっていまして、製造した分はすぐに売れてしまって、ケーキ屋で販売する分も確保するのが難しいくらいでして。通販に回す分まではなかなか…

安田

いやぁ、すごいですね! ちょっと思ったんですけど、シュトーレンは保存食ですよね。「できたてをすぐに食べるより、熟成させて食べたほうが美味しい」ってスギタさんも教えてくださったじゃないですか。


スギタ

そうですね。シュトーレンって日にちが経つにつれて味が変わっていくという、ちょっと珍しいお菓子なんです。

安田

ですよね? だったら、ちょっと手の空いている時に作って置いて、ちょうど食べ頃になったら売り出す、ということもできるんじゃないですか?


スギタ

あ〜なるほど。確かにそういうこともできそうですね。パン屋さんって毎日のパン作りが忙しすぎるから、「前もって段取りを組む」ということまで発想が及ばなかったです(笑)。

安田

私、本当にシュトーレンが大好きなので、クリスマスシーズンだけど言わずオールシーズンで販売してもらいたいんですよ(笑)。だから通販も、年4回くらい届く「定期便」のような通販をしていただきたいなと。季節のフルーツを使ったシュトーレン、みたいに。


スギタ

それ面白いですね! 1シーズンに1回っていうのもいいかも。毎月1回だと商品開発もなかなかしんどいので(笑)。

安田

ユーザー側も毎月シュトーレンが届くのは、だんだん新鮮味がなくなると思うので、3ヶ月に1回程度でお願いします(笑)。通年で購入するとシュトーレンの保存容器もついてくる、ってなったら最高ですよ(笑)。


スギタ

いいですね〜(笑)。翌年も購入してくれたら、今度はシュトーレンをカットするためのナイフが届きます、とかもどうです?(笑)

安田

それもいいですね〜(笑)。ぜひやっていただきたいですね。そうしたら私、すぐに申し込みますので!(笑)


対談している二人

スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役

1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから