地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第24回 1年に1回、必ず値上げするパン屋さん

今、世の中的には「値上げ」がかなり大きなテーマになっていますよね。仕入れ値は上がっているし、人件費もどんどん上がっていて。だけどほとんどの中小企業って値上げすることが下手くそだと思いません?(笑)

そうですね。ただ以前スギタさんは、『スギタベーカリー』では毎年必ず値上げされるって仰っていましたよね?

基本的にはそうですね。同じ商品のまま値上げだけするということはやりません。例えばスギタベーカリー一番人気の「食パン」も、毎日の製造と同時並行で、試作品も作り続けているんですよ。

ええ、違います。価格の改定日に合わせて全商品を作り変えるのってものすごく大変なので、商品開発は年間を通して行っています。だからタイミングによっては、リニューアル商品を旧価格のまま売ることもあるんですよ。

なるほどなるほど。ちなみにケーキ屋さんもパン屋さん同様、1年に1回必ず値上げをしているんでしょうか。

そうなんです。どうしても「安いお店」にお客さんは集まりがちなので、業界全体として値上げをためらう風潮がある。でも何度もお伝えしているように、それをやり続けている限り、パン屋は儲からないし、働き手もどんどんいなくなる。

でもこれってパン屋さんに限った話ではなく、あらゆる業界の経営者にとって参考になる話だと思いますね。儲からないと思うなら値上げをしろ、と。しかも単に値上げするのではなく、今の商品にいかに高い付加価値をつけられるかを考えろ、と。

そうです。「デッドライン」を決められるのって経営者にしかできない仕事だと思うんです。なのに「いつ」値上げするか決められていないから、ダラダラと考えたり開発を続けたり試作することしかできていない。

そういうことです。そもそもこの人手不足の時代に、これまでのように「大量」に製造するのは困難になります。だから「売れ数」が少なくてもしっかりと利益が確保できるようにしていくべきだと思っていて。いわゆる「減収増益」といったことを考える段階にきているんでしょうね。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。