地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第5回 個人店の「希少性」が、生き残る秘訣

なぜそういう風潮になってしまったんでしょうね? チェーン店だからといって、別に味が悪いわけでもない。たぶんよっぽど舌が肥えた人じゃなければ「これはチェーン店のケーキだな」なんてわからないと思いますし。

いや、必ずしも売上が落ちているわけではないですよ。たとえばシャトレーゼさんもチェーン店ですが、ずっと業績は伸びている。国内だけで820店舗も展開していて、今や「シャトレーゼ一強時代」と言ってもいいくらいの成長を続けてます。

うーん、どうでしょうかねぇ。実は数年前に、ウチのお店から車で5分くらいの場所にシャトレーゼができたんですよ。

なるほど。用途によって行くお店を変えている人もいるわけか。ちなみにスギタさんのケーキ屋さん『ハーベストタイム』は、1店舗だけじゃないですか。シャトレーゼさんほどじゃないにしても、店舗数を増やそうとは考えていないんですか?

ええ。普通に考えたら、認知度が高まるのは良いことですよね。「誰に聞いても知っているお店」になれば、それは当然集客にもつながるわけで。でももしかすると、それにも「臨界点」があるのかもしれないと思っていて。

なるほどなるほど。一方で個人店の中には、チェーン店に寄せる店もあるじゃないですか。商品ラインナップも金額もチェーン店を真似して。あれ、不思議でしょうがないんですよ。なぜ自ら「個人店の強み」を捨てているのかと。

ですよね。価格に見合った美味しさやこだわりがあれば、お客さんは普通に買うんですよ。だってケーキって「ハレの日」の食べ物じゃないですか。ケーキを食べることで特別な満足感を得たいから買うわけで。

まさにそうなんです。どうしても「ケーキ屋」というくくりの中だけで考えると、「チェーン店に比べたら高いよな…」と思われがちですが、「お祝いのシーンを華やかに盛り上げたい」というニーズを満たしているんだと考えたら、安売りをする必要は全くないかなと。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。