地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第85回 3日間で1,300個! クリスマスケーキ戦線の舞台裏

比べ物にならないくらいクリスマスの方が大変です。クリスマスケーキのご予約だけで1,000個とか入りますから。それを間違いなく、すべてのお客様にお渡ししないといけない。絶対にミスは許されないぞ、という緊張感がすごいです。

そりゃそうですよね(笑)。当日買いに来る人、予約のケーキを受け取りに来る人、それにホールケーキじゃないカットケーキを買う人も、皆が一斉に押し寄せるわけですから。ちなみにピークは決まって24日なんですか?

断トツで24日です。それが平日だろうが関係ないですね。ちょっと前まで23日が天皇誕生日で祝日だったじゃないですか。それでも23日より24日の方が忙しかったですね。クリスマス当日の25日なんて、24日の半分ぐらいに感じます(笑)。

うーん、特に変わったことはやってないんですけどね。「ご予約いただいてた方がスムーズにお渡しできますよ」とアナウンスするくらいで。まぁそういうことを地道にやってきた結果なのかもしれません。お店側としても、当日になって「一体何個売れるんだろう」ってヒヤヒヤするよりも、前もって確定してた方が、はるかに計画的に作れますから。

うちはかなり早いと思いますよ。実はご予約のケーキは、ケーキ屋ではなくパン屋の方でお渡しするようにしているんです。だから取りに来ていただいたらすぐにパン屋のレジでお渡しできる。あの当日の大行列に並ばなくてもいいという仕組みにしてるんです。

なるほど! その日だけはベーカリーのメンバーもケーキ屋さんになって、総出で作るわけですね。でもパン屋さんにケーキ作れる人がそんなにいるんですか? ……あ、そうか、スギタベーカリーのスタッフって、元パティシエさんですもんね。

素晴らしい。なんだかお祭りみたいで楽しそうですね。スギタベーカリーさんとしても、ハーベストタイムさんとしても、会社全体での一大イベントじゃないですか。

ええ。本当に楽しいイベントです。ただ、その1,000台の予約管理をしっかりして、間違いなくスムーズにお渡しをしないといけないというプレッシャーは大きいですけどね。神経をすり減らす業務でもあるので、やっぱりクリスマスが近づくとヒヤヒヤしています(笑)。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。


















