第9回 パティシエ、スタバでアルバイトを希望?

この対談について

地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。

第9回 パティシエ、スタバでアルバイトを希望?

安田

広島で『ハーベストタイム』『スギタベーカリー』の2店舗を経営するスギタさんですが、聞くところによると、過去にスターバックスの面接を受けたことがあるとか。


スギタ

ええ、そうなんですよ(笑)。残念ながらご縁はなかったんですけどね(笑)。

安田

それは学生時代の話ですか?


スギタ

いえいえ、最近です(笑)。2022年から2023年にかけての話で。

安田

そんなに最近の話だったんですね! すでにケーキ屋さんもパン屋さんも軌道に乗っていたのに、なんでまたバイトなんてしようと思ったんですか?


スギタ

「バイト」に興味があったわけじゃなく、「スタバ」で働いてみたいと思っていたんですよ。

安田

ほ〜、なるほど。スタバじゃなきゃダメだったと。それはどうして?


スギタ

話はダニエルでの修行時代にまで遡るんですが。当時、僕は社員面接にも同席していまして、ある時「学生時代にスタバでバイトをしていた」という方が来られたんですね。

安田

ふむふむ。


スギタ

その頃『スターバックス成功物語』という本を読んでいたこともあって、スタバという会社にすごく興味があったんですよ。だから面接にいらした方に「スタバってどんなところなんですか?」と聞いてみたんです。

安田

面接官なのに、相手の職場について聞いてしまったと(笑)。


スギタ

そう(笑)。そうしたら、その方がものすごく饒舌にスタバの魅力を語ってくれたんですよ。「アルバイトで働いていただけで会社のことをこんなに語れるって、すごいな」って思って。

安田

確かにスタバって、アルバイトの人でもロイヤリティが高そうですよね。


スギタ

そうなんですよ。だからいつか働いてみたいという思いがありまして。

安田

ふーむ。でも、ダニエルでの修行後は広島に戻ってお父さんのお店を継いでしまったので、その機会がなかったと。


スギタ

そういうことです。でも、一昨年くらいにふと、「昔はカフェをやりながらケーキ屋さんもやってたんだし、アルバイトの時間くらい捻出できるんじゃない?」と思いまして。

安田

確かに昔の激務時代を思えば、数時間のバイトくらいわけなさそうですもんね(笑)。


スギタ

そうそう(笑)。ちょうど近所のスタバで「1日5時間・週2日から働ける方」ってアルバイト募集が出ていたので、応募してみました。

安田

いいですねぇ。でもその結果、不採用だったと(笑)。


スギタ

はい(笑)。その後も他のスタバを回って、結局6店舗も受けたんですが、ものの見事に全落ちでした(笑)。

安田

6店舗も! ちなみに履歴書には社長をやっていることは書いたんですか?


スギタ

もちろん全部書きました。だから面接をしてくださる店長さんたちもびっくりしていて。「これは…冷やかしですか?」みたいな(笑)。

安田

そりゃそうでしょうね(笑)。2つもお店を経営している社長がアルバイトするなんて、聞いたことがないですから。


スギタ

笑。とはいえ、「真剣に働きたいんだ」という気持ちは伝えたので、きちんと面接はしていただけましたけどね。…あ、でも1店舗だけ書類選考で落ちたお店がありました。高速に乗らないと通えないお店だったので、まあ仕方ないんですけど(笑)。

安田

笑。でも、そんなところまで行っているってことは、現実的に通勤可能なエリアにあるスタバは、全部受けてみたんですか?


スギタ

ほぼ受けましたね。でも、市内中心部にある数店舗だけはまだ受けてないんです。そこは「最後の砦」にしているので…。

安田

最後の砦(笑)。まだ諦めてはいないと。


スギタ

はい、もちろんです(笑)。

安田

でも、スギタさんほどの方だったら間違いなく戦力になると思うんですけど、なぜ不採用だったんですかね。面接って各店の店長がするんですか?


スギタ

そうですね。お店で店長さんに15分間面接していただいて、不採用の場合はメールで連絡がきます。ただ、理由は特に開示されないんですよ。

安田

へぇ〜、そうなんですか。じゃあ、なぜ落ちたのかはわからないわけですね。


スギタ

でも実は、それは直営店の話で、FC店はちょっと違っていたりもして。ちなみに日本では唯一『カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社』だけがスタバのFC運営ができるんですよ。

安田

へぇ〜。カルチュア・コンビニエンス・クラブというと「蔦屋書店」も運営している会社ですよね。そう言われてみると、蔦屋書店とスタバが併設していること、よくありますね。


スギタ

そうそう、それです。で、僕も蔦屋書店併設のスタバを受けたことがあったんですが、そこは直営店とは違って、面接の時間も1時間あったし、不採用の理由もちゃんと教えてくださって。

安田

ほう。不採用の理由、気になります(笑)。


スギタ

笑。僕の「稼働日」がネックだったそうです。

安田

というと? だって応募資格の「1日5時間・週2日」は満たせていたわけですよね?


スギタ

そうなんですが、お店側の「どうしても出勤してもらいたい時期」と、僕側の「絶対に出勤できない時期」が、見事に丸かぶりしていたんですよ。

安田

ああ、そういうことですか。クリスマスやバレンタインみたいに「ケーキ屋さんやパン屋さんの繁忙期」が、スタバにとっても繁忙期だったと。


スギタ

仰るとおりです。スタバの求める人材像とか評価軸のようなものにはマッチしていたし、僕を採用したら面白そうだなと思ってはくれたみたいなんですが…。

安田

まあ確かに、一番人手が欲しい時に「自分のお店の仕事が忙しいので〜」って休まれちゃったら、お店も困りますもんね(笑)。


スギタ

そうそう。FC店の店長さん曰く、直営店の方での不採用理由もおそらくそれじゃないかってことでしたね。

安田

ふ〜む。それはもう店長決裁では無理ですね。次はもっと上層部にアピールしましょう!


スギタ

上層部、ですか?(笑)

安田

そう。直々に社長のところまで行って「僕を採用したら、店舗の売上5倍にします!」って言ってみましょう。絶対採用されますよ!


スギタ

わかりました(笑)。スタバで働く夢は諦めていないので、「最後の砦」の店舗の面接に挑む時には、ちょっとその方向でアピールしてみようかな(笑)。

安田

ぜひぜひ。いつかスタバで働くスギタさんにお会いするのを楽しみにしていますね(笑)。


対談している二人

スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役

1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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