第103回 貯金と投資、どちらが得か

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第103回 貯金と投資、どちらが得か

安田
鈴木さんってNISAとか確定拠出年金ってやられています?

鈴木
確定拠出年金はやっていますね。銀行から「やりませんか?」って案内受けて、言われるがままに…(笑)。
安田
笑。私も確定拠出年金をやっているんですけど、そもそもこれって「自分の老後資金は自分で投資して貯めてね」というものじゃないですか。それで株を買うわけなんですが、実は多くの人が海外株を買うんですって。

鈴木
へぇ。国内企業の株は買いたくないんですかね。
安田
海外企業の方が成長率が高いので、株の値段がどんどん上がっていくんですよね。あとは今、円安じゃないですか。15年くらい前にドルで貯金をしていた人は、今、円換算すると1.5倍〜2倍くらいになってるんですよ。

鈴木
うーん、そう考えるとすごいですね。
安田
もともと日本人は自国に対する信頼が非常に強かったんですけどね。でも現実として、今は海外株や海外通貨を買った方が圧倒的に資産が増えていく。「日本のために円を持ち続けよう」と思っていたような人たちまで、海外株・海外通貨に切り替えているんだろうなと。

鈴木
うーん、古い人間からすると、海外株や海外通貨に投資するのってちょっと怖いですけどね(笑)。なんかギャンブルみたいな感じがしちゃって。
安田
それが大半の日本人が思ってきたことなんですよね。というか、海外・国内問わず、今でもまったく投資をしていない人が大勢いますし。

鈴木
国の一大キャンペーンでグッと増えたんでしょうけど、それでもやっぱり「貯金の方が安心」と考えてる人が大半なんでしょうね。
安田
そうそう。日本人は圧倒的に「貯金」なんです。その総額は1000兆円とも言われています。でもね、それは言い方を変えると「円に投資している」ってことなんですよ。

鈴木
ああ、円で持っているということは、円を買っているってことですもんね。本人にその感覚があるかどうかは別として。
安田
仰るとおりです。つまり日本国民の多くは日本円に投資している。ただこれがドルや海外株に投資するようになると、要するに国内からお金がどんどん流れ出ていくわけですよ。

鈴木

若い世代は投資に対してのハードルも低そうですしね。僕や安田さんの世代って、汗水垂らして働くのが美徳だったじゃないですか。楽して儲けるなんてダメだっていう風潮があったというか。だからなのか、「投資」というものに漠然とした悪いイメージがある。

安田
そういう人は多いでしょうね。まあ実際は「自分のお金をどこに置いておくか」という程度の話なんだと思いますけど。

鈴木
そう言えば最近って、都内の高層マンションを投資目的で買う外国の方が多いんですよね?
安田
1億円以上する都内の高層マンションも、建てた瞬間に完売するそうですね。日本人からすればとても手が出ないわけですが、海外の人にとっては「すごくリーズナブルだ」と。自国で物件を買うより随分安く買えてしまう。

鈴木
円安だし、海外のインフレ率に比べれば日本は全然マシですもんね。
安田
ええ。でもそれが当たり前になると、日本で働いて日本円で給料もらっているだけで貧乏になっていく感じがしてしまう。そのうち有名企業は全部外資に買われてしまって、ドル建てで給料を払ってくれるようになるかもしれないですね。

鈴木
日本で働いているけど、報酬はドルでもらうわけか。確かにレートによっては1.5倍くらいの差が出そうですし、働く側としても嬉しいわけで。
安田
そうそう。しかもドルのまま貯金しておけば、数年後、日本円で貯金しているよりもさらに大きく差が広がる可能性もあるわけでしょ? みんなそろそろ気づきだしているんじゃないですかね。

鈴木
いや〜どうでしょうね。分かっていてもやらないのが日本人ですから(笑)。
安田
そうなんですよ! たとえそっちの方が得なんだとわかっていても、変化を嫌うのが日本人(笑)。ということは、今後も当分、貯金を続けて円を買い支え続ける人は減らなそうですね(笑)。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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