この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第121回 中小企業が取るべき経営戦略は「潜在ニーズ」の掘り起こし
第121回 中小企業が取るべき経営戦略は「潜在ニーズ」の掘り起こし

そうそう。しかも今はネット全盛時代で、「一番安い店」で検索するのも簡単だし、「家から近いからこの店で買う」みたいな習慣もなくなっちゃった。…こうなってくると、もう顕在マーケットでは戦っていけない。だから中小企業こそ、潜在マーケット、つまり「消費者のニーズを掘り起こしていく」ことが必要なんだろうなと思うんです。

一般的な中小企業であれば、仰るとおりだと思いますね。ただウチのような葬儀業界みたいに、「ニーズを掘り起こす」ことができない業界もあるんですけど(笑)。

テレビショッピングでエアコンを買ったんです。ものすごく安くてね。すごくお得に買えたなと喜んでいたのもつかの間、売れすぎて取付工事をしてくれる業者が全然捕まらないんですよ(笑)。「暑くて今すぐエアコンが欲しい」というニーズを満たすために買ったのに、そのニーズがいつまでも満たされない(笑)。

そうなんです。お客さんは「知らない」だけで、情報さえ与えてあげればウォンツも結構出てくるんですよ。先ほど鈴木さんは「葬儀業界はニーズの掘り起こしはできない」と仰ってはいましたが、細かいサービスなどで新たなウォンツを掘り起こすことはできるような気がします。

ああ、確かにそうかもしれません。最初はご遺族の方も「安かったらなんでもいいです」みたいに仰っていても、こちらがあれこれ情報提供することで、「確かにお世話になった人をたくさん呼べた方がいいな」とか「故人の好きだったお花でいっぱいにして送り出してあげたいな」といったウォンツが出てきたりします。

ああ、エンディングノートなんかは、ニーズが発生する前の段階でウォンツを掘り起こしているわけですもんね。そうやって「事前に準備」する人はまだまだ少ないのが現状ですが、僕も定期的に『終活勉強会』を開催して情報発信をしたりしています。

素晴らしい。そもそも鈴木さんのやられている『相続不動産テラス』も、親族が亡くなったあとに発生するニーズを想定したものですもんね。亡くなるまでは気づかないんだけど、そこには確かに潜在的なニーズがある。こういう部分に対応できるかどうかが、中小企業の命運を分けるんだと思います。
対談している二人
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。