この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第122回 地道な啓蒙活動が、顧客の「欲しい」を生み出す
第122回 地道な啓蒙活動が、顧客の「欲しい」を生み出す

前回の対談では、これからの中小企業にとって「潜在ニーズ」の掘り起こしが必要不可欠だというお話が出ましたね。でも、じゃあどうやってその掘り起こしを行うのか。私としては「啓蒙活動が重要」だと思っているんですよ。

ありがとうございます。まず重要なのは「足を止めてもらうこと」ですよね。たとえば大勢の人が立ち止まって空を見上げていたら、自分もつい見ちゃうじゃないですか。そういう「シーン」をすごく意識してまして。

そうですそうです。人は何らかの違和感がないと興味を持ってくれませんからね。でも興味を引けたとしても、それだけで「買いたい」となるわけではない。だから次に「実はこれが必要だったんだ」と消費者を納得させるためのロジックを用意するわけです。

ははぁ、なるほど! 前回の対談で出た「給湯器のサービス」で例えると、まず「設置工事のクオリティ、考えてます?」という違和感を与える。で、「実はこんなに差があるんですよ。せっかくならいい人に頼みたいですよね?」という論で伝えると。

笑。でも鈴木さんもずっと「啓蒙活動」されているじゃないですか。以前もお聞きしましたが、ご葬儀マナーのチラシを作成して配布していたでしょう? あれだっていざと言う時に問い合わせてもらうための仕掛け、つまり啓蒙活動じゃないですか。

ウチでご葬儀をやってくださったお客様向けです。直接お会いしたことのない方もたくさんいるんですが、このレターにご感想とかご意見をいただく機会も多いんですよね。そうやって細く長く繋がっていければいいなという気持ちで300号くらい発行し続けています。

ええ。実際にニュースレターには、新しいサービスの案内も当然載せるんですが、「どうしてこのサービスを始めたのか」というような想いの部分もしっかり説明しています。それがある種の啓蒙活動になっているのかもしれない。無理に売り込むことはしていないんですけど。
対談している二人
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。