第129回 東京は「死んだ後」もお金がかかりすぎる?

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第129回 東京は「死んだ後」もお金がかかりすぎる?

安田
今、東京23区では火葬料がものすごく高くなっているらしいですね。中国資本の会社の参入が原因らしいんですけど。

鈴木
そうらしいですね。でも、東京の火葬場って『東京博善』という会社がほぼ独占状態で運営しているんですが、その会社にはずいぶん前から中国資本が入ってたはずですよ。
安田
え、そうなんですか!

鈴木
はい。確か2021年頃に、東京博善の親会社である『廣済堂』っていう会社を中国企業が買収していたはずです。
安田
そうだったんですね。でもその結果、5〜6万円だった火葬費が9万円くらいまで値上がりしちゃっていると。

鈴木
なかなかの値上がりですよね。まぁ、そもそも東京は特殊なんですよ。日本で唯一火葬場を「株式会社」が運営しているので。
安田
え? 民間企業が入っているのは東京だけなんですか?

鈴木
そうなんです。基本的に地方の火葬場は「公」。だからウチの地域だと費用は1万円くらいですし、名古屋なんかは5000円くらいだったはずです。
安田
安いですね! …ということは、東京の人も地方に火葬してもらいに行けばいいってことですか?

鈴木
いやいや、基本的にはその自治体に住んでいる人が対象です。違う自治体から来ると、値段は6倍くらいに跳ね上がりますよ。
安田
なるほどなるほど。でも、なんで東京だけ民間企業が経営しているんですか?

鈴木
簡単に言えば既得権ですよね。東京博善さんはかなり昔から東京で火葬場を運営していたので。
安田
単にそういう話なんですか? なんだか「なるほど!」とはならない理由ですけど。

鈴木
まぁでも、仕方ない部分もあって。新しく火葬場を作るってすごく大変なんですよ。地域住民が必ず反対しますので。そういう意味で「古くからそこに存在している」という事実はかなり重要で。
安田
ああ、なるほど。確かにそうですよね。住人たちも「近くに火葬場がある」ということを承知で住み始めていると。

鈴木
そうそう。一応、東京には『臨海斎場』という公営の火葬場もあるんです。でもこちらはアクセスがすごく悪い。だから結局、近くて便利な東京博善さんを皆さん使うことになる。
安田
ああ、そういえば私の義父が亡くなった時の火葬場は、都心のかなりいい場所にありました。まぁ、火葬までにずいぶん待たされて大変だったんですけど。

鈴木
それも今問題になっていますよね。需要と供給でいうと「供給」が圧倒的に足りていない状態。待ち時間もかなり長くなっているようで。
安田
今ですらそういう状況なのに、東京の人口はどんどん増えているじゃないですか。当然亡くなる人数も増えていくわけで。今後はどうなっちゃうんでしょう。

鈴木
うーん、どうなんでしょうね。僕らの地域で言えば、火葬炉(釜)の数を増やすなどの対応をしていますけど、それを民間企業がやるかどうかというね。大きな先行投資になるのは間違いないわけで。
安田
結果、火葬料の値上げも致し方ない、と。

鈴木
そういう理由もあると思いますよ。ちなみに先ほど安田さんも仰ったとおり、東京だと今は火葬するまでに1週間待つなんてことも珍しくなくて。
安田
今後はそれが2週間、3週間とどんどん長くなってくる可能性もあるんでしょうか?

鈴木
あると思います。だから「安置施設」というご遺体を預かる冷凍庫のような施設がもっともっと必要になってくる。安置施設って病院にもあるんですけど、それだけでは全然数が足りないので。
安田
それってもちろん有料ですよね? ということは火葬費もどんどん高くなるというのに、火葬してもらうまでの順番待ち状態でもお金がかかると。

鈴木
まぁ維持費がかかりますのでね、無料というわけにはいきませんよ。
安田
…いやぁ、東京で生きるって大変ですね。生きている間の家賃や生活費だけじゃなくて、死んでからもお金がかかる(笑)。

鈴木
しかも死んだ後に入るお墓も高いじゃないですか。青山霊園なんて、普通の人は入れないでしょ?(笑)
安田
間違いないですね(笑)。それにしても、東京の火葬場にこんな裏事情があったとは。興味深いお話をありがとうございました!

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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