さよなら採用ビジネス 第103回「リストラ部屋はどこに行く」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第102回『休み続けたその先は?』

 第103回「リストラ部屋はどこに行く」 


安田

中小企業では社長が連帯保証しますけど。大企業は社長もサラリーマンですよね。

石塚

そのとおり。

安田

そう考えるとコロナの影響なんて、大企業の経営者には大したことない気がします。

石塚

上場企業であれば株価にも影響するじゃないですか。

安田

それは影響するでしょうね。

石塚

いまのままだったら含み損でドーンと業績が下がる。会社業績が下がるってことは、株価が下がるってこと。

安田

「コロナの影響です」って言えば株主総会は乗り越えられそうですけど。

石塚

経営陣は株の報酬もあるから。株価が下がるのは困るわけですよ。

安田

なるほど。他人事ではないと。

石塚

だから次に何をやるかといったら、市場が納得するような劇的な手を打つ。となればもうリストラしかない。

安田

市場を納得させるためのリストラですか。

石塚

はい。「人員を思い切って削減します」と。

安田

コロナの前からすでに大手はリストラしてましたけど。さらに激しくなるってことですか?

石塚

逆にチャンス到来でしょ。

安田

チャンス到来?

石塚

たとえば三菱UFJを見て「ああ、やっぱり」って。AIの登場でいちばん追いやられるのって、生産性や付加価値のない高年収社員なんですよ。

安田

まあそうでしょうね。

石塚

事務系の社員はペイしてるんです。給料に見合ってるからそのまま働いてくださいと。

安田

事務系だけだったら成り立つってことですか。

石塚

支店は半分ぐらいにするけど、事務処理をする人は雇ってもぜんぜん問題ない。AIでは取って代われない。

安田

へえ。そうなんですか。

石塚

いらないのは本部を中心にしたホワイトカラー。年収1,200万~1,500万、メガバンクであれば45歳過ぎた人たち。

安田

リモートワークが導入されて、もう元には戻らないんじゃないかと言われてます。そうなると管理職がいらなくなる。

石塚

そうなんです。だから大企業の社長さん、語弊を恐れずに言うとすごく明るいんですよ。

安田

え!明るいんですか?

石塚

明るいです、気分的に。「ヒマだよぉ」って言って。

安田

ひま?

石塚

「なんでヒマなんですか?」って聞いたら「余計な会議みんななくなった」って。「これ、ひょっとしたら、このままいけるかな」って言ってました。

安田

経営者は会議を減らしたいんですか。

石塚

だって優秀なホワイトカラーは、毎日会社に来させる必要なんてないし。マネジメントも最低限で十分。

安田

確かにそうですね。優秀な人ならリモートで仕事してくれれば十分ペイするし。

石塚

この収録だって今はオンラインじゃないですか。

安田

まあこういうご時世なんで。

石塚

安田さん「オンラインは嫌いです」って言ってたのに。

安田

いや、ホント嫌いなんですよ。でもそんなこと言ってられない。

石塚

必要は発明の母で、必要性があれば好むと好まざるとこうなるじゃないですか。

安田

なりますね。「スマホは嫌いだから使いません」と言ってるに等しい。やらないわけにはいかない。

石塚

僕はもう完全に慣れました。目の前にいる安田さんと話してるような感覚。

安田

さすがですね(笑)。でも私もzoomが増えましたよ。

石塚

ホント便利ですよ。移動がないし。

安田

話が戻っちゃいますけど、優秀な人には管理が必要ないってことでしたよね。

石塚

いらないです。

安田

変な報告書もいらないし、忖度もいらないし。逆になくしちゃったほうが生産性が上がる。

石塚

そのとおり。

安田

ただ大手の40〜50代って、管理とか報告とか許可を与えるために存在してたわけですよね。

石塚

そうです。

安田

ということは、丸ごとそこはいらなくなってしまう。

石塚

おっしゃるとおりです。それは間違いなく加速します、この2年で。

安田

加速しますか?

石塚

します。

安田

その人たちを「いらない」って判断する人も、明日は我が身ですよ。

石塚

いや、経営陣は別ですね。いらないのは高給取りの中間管理職。

安田

経営陣も似たようなものだと思いますけど。

石塚

大企業の経営者はニコニコしてます。コロナのおかげで生産性が著しく可視化されたので。

安田

自分は安全地帯にいるってことですね。

石塚

もちろん。安全地帯からどんどんリストラを進めていくんです。

安田

リモート時代のリストラって、どんな感じで始まるんですか?

石塚

「ちょっと能力的に足りないね」と判定したら、「そのまま自宅でeラーニングしてください」って。

安田

自宅で研修させるってことですか?

石塚

はい。会社で用意してた「リストラ部屋」を自宅に持っていける。

安田

ひどい。じゃあ自宅が「窓際」になるわけですか。

石塚

そのとおりです。もはや都心のオフィス自体がいらなくなる。

安田

そもそも通勤時間って無駄ですもんね。

石塚

無駄です。その時間、働いてもらったほうがよっぽどいい。

安田

でも優秀な人材だけをそんなにうまく見抜けますかね。

石塚

オンライン会議をやると、優秀な人と優秀じゃない人ってすぐわかるそうです。

安田

発言しなくなるってことですか?

石塚

おっしゃるとおりです。発言やアイデア出しがない。

安田

いままでだったら会議で目立たないようにしてたのに。目立たないことが逆に目立ってしまうと。

石塚

そういうことです。

安田

そういう人は次から会議に呼ばれない?

石塚

あるオンライン会議のシステムでは、発言回数が少ないと画面がだんだん小さくなっていくんだって。

安田

えーっ、恐ろしい。

石塚

恐ろしいですよね(笑)

安田

発言は少ないけど優秀な人もいるでしょ?

石塚

どの責任者さんも言います。「プロジェクトに必要な人はすぐわかる」って。「次のアサインどうしましょう?」「高松君は入れといて」「石塚さんはどうします?」「あいつはいいや」みたいな。

安田

だんだん呼ばれなくなっていくと。

石塚

「あれ?最近呼ばれないなあ」なんて思ったら、人事から「石塚さんは最近の生産性に問題がありますので、ちょっとトレーニングが必要です」って。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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