第134回 インフラ維持の限界に対抗するには

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第134回 インフラ維持の限界に対抗するには

安田
千葉県の『いすみ鉄道』というローカル線が、2024年10月に脱線事故を起こしたんですけど。実は未だに復旧していないんですよ。

鈴木
え! もう1年以上復旧していないってことですか? 脱線の原因はなんだったんです?
安田
線路の枕木が腐食しちゃっていたらしくて。要はメンテナンスができていなかったんですよ。当然、国としては線路を修理しない限り列車を動かすことにOKは出せないじゃないですか。ところが鉄道会社には修理やメンテナンスをするだけの資金力がないんですって。

鈴木
そうか、ローカル線だからそんなに利益も出ていなかったんですね。…じゃあその路線はどうするんですか?
安田
もう廃線にするしかないんじゃないかって話になっているみたいです。

鈴木
う〜ん、そんなことしたら、沿線に住んでいる人の足がなくなっちゃって困るんじゃ?
安田
そうなんです。実際、国や自治体が補助するべきじゃないかっていう声もいっぱい上がっているそうなんですが、いかんせん、今はもう国も自治体も赤字で。かといって増税なんてしようものなら国民は怒りますし。どうしたらいいんでしょうね?

鈴木
難しい問題ですね。今の話で思い出したんですが、ウチの近くにも廃線危機の路線があるんですよ。名鉄広見線っていうんですけど。終点の御嵩駅には高校もあって。
安田
学生さんたちが使っているわけですね。じゃあそれ、廃線にしちゃったら大変なことになりそうです。

鈴木
そうそう。だから今、3つの行政が補助金を出し合って、なんとか存続させている状態です。とは言え、土日の利用客はほとんどいないようなので、おそらく名鉄としては廃線にしたいんでしょうけどね。
安田
そりゃそうですよね、商売ですから。というか、今は行政からの補助でなんとかなっているのかもしれませんけど、インフラは必ず劣化していくので、数十年単位でリニューアルする必要があるじゃないですか。でもこれから人口が半分になる時代に、昔と同じだけの予算をかけ続けるのは無理ですよね?

鈴木
無理ですね。だからもう「今のインフラが壊れたら終わり」という覚悟でいるしかないのかもしれない。あとは代替手段を考えていくのも1つの手だと思います。
安田
電車以外の手段ということですか?

鈴木
そうそう。例えば無人バスとか無人タクシー。これだったら線路のメンテも不要だし、人手不足も関係ないですから。
安田
なるほどなるほど。もしくは学校もオンライン授業に切り替えて、移動の必要性自体を減らすとかもいいかもしれない(笑)。

鈴木
それは思い切ったアイディアですね(笑)。まあでも結局は、「税金はこれ以上払わないけど線路は維持しろ」というのは自分勝手な話で。維持したいなら自分たちでお金を出すか、代替手段のアイディアを出すかしかないと思いますよ。
安田
そうですね。移動手段のインフラなら代替案もいろいろ考えられそうですし。ただ、上下水道やガスといった生活インフラが壊れてしまったらどうにもならないと思いません?

鈴木
うーん、それは確かに困りますよね。でも今の国や自治体には十分なお金もないし…。どうしたらいいんでしょう?
安田
私はもう、ある程度集まって住むしかないのかなと思います。各都道府県で3〜4くらいの都市を決めて、そこに住んでください、と。

鈴木
なるほど! 人が集中して住んでくれていたら、インフラの整備も限定的で済みますね。それはなかなかいい案かもしれない。
安田
ですよね? それが嫌な人は、自分の責任で好きな場所に住めばいいわけですから。いずれにせよ現状のままでは、インフラが劣化しても国はそれを補填できないので、新しい道を探していく必要がありそうですね。

対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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