第14回 結婚は時代遅れ?

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第14回 「結婚」は時代遅れ?

安田
今日は結婚制度について、鈴木さんのご意見を聞かせていただきたいなと思っています。

鈴木
結婚ですか。これまでとはずいぶんテイストが変わりましたね(笑)。
安田
今の日本は少子化で大変だと言われていますけど、実は1組の夫婦から生まれる子どもの数はそこまで大きく減っていないらしいんですよ。

鈴木
へえ、そうなんですか? じゃあ結婚すると、だいたい1〜2人は子どもが生まれているわけですね。
安田
そうらしいです。ただ、結婚する人はどんどん減っている。だから一気に少子化が進んでいるんだそうですよ。

鈴木
それは知らなかったですね。
安田
国が「少子化対策」と銘打っていろいろな制度や手当などを用意していますが、それは既に生まれた子どもに対する「育児対策」であって。「生まれる数を増やす」という本来の意味での「少子化対策」としては機能していないようですね。

鈴木
そうか、そもそも結婚する人を増やさなければいけないわけですものね。でもなんで結婚する人が減っているんですか? やっぱりお金の問題なんでしょうか?
安田
そうでもないみたいなんですよ。だって結婚して一緒に住めば家賃や生活費は折半できるじゃないですか。だからお金の問題ではないんですよ、きっと。

鈴木
ああ、確かにそうですよね。ということは、そもそも結婚にメリットを感じていない人が多いというわけですか。
安田
個人的には、結婚という制度はすでに賞味期限が切れかけの状態なんじゃないかと思っているんです。鈴木さんは結婚ってどういうことだと思いますか?

鈴木
う〜ん、今でいう結婚とは少し意味合いが違うかもしれませんが、太古の昔からそういった制度はありましたよね。契りを交わす、というか。
安田
たしかに昔の結婚は、家と家同士の結束を強めたり縁戚関係を広げたりするため、という感じでしたよね。

鈴木
そうですよね。戦国時代なんて、自分の領土を広げるために、結婚をある種の「ツール」として使っていたフシもありますし。
安田
それでいうと、子どもを作ることにも今とは違う意味合いがありましたよね。当時、子どもは農作業や家業を手伝わせるための戦力でしたから。つまり収入を増やしてくれる存在だった。でも今は、子どもが増えればむしろ支出が増えていきますからね(笑)。

鈴木
どんどんお金がかかる(笑)。
安田
現代では、領土を広げる必要もないし、家の仕事を手伝わせるために子どもを生む必要もないわけですよね。そういう時代の変化もあって、結婚に価値を見い出せない人が増えているのかもしれません。

鈴木
なるほど。それが安田さんの「賞味期限切れ」という言葉に繋がるわけですね。制度自体をアップデートする必要がある、と。
安田
ええ、私はそう思います。「今の時代に合った制度」という視点で考えると、もっと結婚の敷居を下げたほうがいいのかもしれないですね。

鈴木
敷居を下げるというと、どういうことですか?
安田
たとえば今は、結婚したら夫婦どちらかの名字が変わりますよね。それが嫌だから結婚したくない、という人も一定数いるわけじゃないですか。

鈴木
ああ、確かに。実際ウチの会社は、結婚はしても旧姓のまま仕事を続けている人が多いですし。
安田
まさにそこなんですよ。ほとんどの人は名前なんて変えたくないんですよ。それなのに今の法律では、結婚したら少なくとも戸籍上は名前を変えなくてはならない。なぜ夫婦別姓じゃダメなのでしょうか?

鈴木
う〜ん…。僕も別に夫婦別姓は悪いとは思いませんけどね。まあただ制度を作った当時は、「名字が変わる」といった目に見える変化が、ある種の「区切り」や「節目」だと捉える人が多かったのかもしれませんね。
安田
俗に言う「家に入る」というやつですね。

鈴木
そうです。今の時代ではだいぶ古臭い考え方なんでしょうけど(笑)。
安田
夫婦別姓だけでなく、同性婚についても日本は世界に遅れをとっています。自治体によっては「パートナーシップ制度」で法律婚と同程度の立場を保証していたりもしますが、充分とは言えない。

鈴木
実際、法律的には「結婚」ではないわけですし。
安田
そうそう。そういった問題を解決することで、「結婚」に至るまでの諸々のハードルを下げる。そうすれば今よりは皆さん結婚していくような気がするんですけど。どう思われますか?

鈴木
僕なんかは「ずっと一緒にいたい人がいるなら結婚すればいいじゃん」と思っちゃうんだけど。そういう単純な話ではないんですかね?(笑)。そもそも、籍入れてなかろうが同棲してたら同じだと思うんだけどなあ。
安田
たぶん同棲の方が気楽なんですよ。一緒に住んでいても、ただ「付き合っている」状態だから。籍が入っていないから別れるのも比較的簡単だし、バツもつかないから次の恋愛にいきやすいし。

鈴木
ああ確かに、離婚するのは結婚する以上に大変だって言いますもんねえ(笑)。
安田
笑。まあ、そもそもの話、子どもが欲しいと思っていない人は、なおさら結婚する理由がないのかもしれませんね。

鈴木
う〜ん、まあ、言っていることはわかりますけど、なんか納得できないな(笑)。一緒に暮らす覚悟があるなら、結婚もできるでしょ? と思うのは、やっぱり古臭い考えなのかな(笑)。
安田
笑。もちろん、結婚することで国の法律に守られる場面も圧倒的に増えますからね。それは単なる同棲にはないメリットかもしれません。

鈴木
でも結局のところ、そのメリットをメリットだと感じられない人が増えちゃったってことなんでしょうね。
安田
そうなんだと思います。だから「賞味期限切れ」なんです。それを必要とする人がどんどん減っているという。

鈴木
なるほどねえ。でもそうは言っても、私はやっぱりこれからも結婚という制度は残り続けていくと思います。というか残っていて欲しいです(笑)。「人生の区切り」をつける意味でも、結婚という制度は必要だと思うので。
安田
だからこそ結婚制度にも、時代に合わせたアップデートが必要なんだと思いますよ。そうしないとわざわざ結婚というカタチを選ぶ人は減り続けるんじゃないでしょうか。

鈴木
結婚率があがらない限り、少子化問題も解決しないわけですもんね。すでに結婚している私たち世代も含め、国全体でより真剣に取り組んでいかなくてはならない課題なのかもしれませんね。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

感想・著者への質問はこちらから