第150回 下請け企業が生き残る道とは?

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第150回 下請け企業が生き残る道とは?

安田
ここ数年、新卒初任給がどんどん上がっていると言われていますけど、中小企業も賃上げをしていかないと生き残れない時代になってきましたね。しかもその賃上げは、巷で「自衛的報酬アップ」と言われているようで。

鈴木
自衛的…要は新人を採用するためじゃなくて、今いる社員に辞められてしまわないように、給料をアップしているってことですか。
安田
そうそう。でもこれ以上賃上げすれば体力の持たない会社もいっぱいある。そもそも中小企業って基本的に下請構造で仕事をしているから、会社に入ってくる金額もある程度限界が見えているじゃないですか。

鈴木
ああ確かに。下請け企業から元請け企業に「もっと値上げしてくれ」とはなかなか言えないですもんね(笑)。仮に言えたとしても、総元請けが仕事を受ける金額が増えない限り、下請けに払える分も増えていかないわけで。
安田
そうなんですよ。元請けと下請けの関係を「会社と社員」に置き換えてみると、会社が「オリジナルな商品や儲ける仕組み」を考え「仕事」を作る。そして社員はそこで働くことで給与を得るわけですよね。

鈴木
ええ。その際に会社が利益を取っていくのは当たり前だし、商品や仕組みを作っている人が価格主導権を握るのも当然です。
安田
そうそう。つまり下請け企業は社員と同じ立場なわけです。だから、元請けが決めた価格以上の利益は取りようがない。

鈴木
儲ける仕組みを生み出していない下請け企業には、自分たちで価格が決められない。理屈では当然ですが、まあ、現実的に考えるとしんどいでしょうね。
安田
そうなんです。そんな中で賃上げしろって言われても、非常に辛いと思うんです。逆説的に言えば、今後は自分たちが元請けになる、つまり直接マーケットと繋がるビジネスをしないと、生き残ってはいけないってことだと思うんです。

鈴木
確かになぁ。まあ、これまでは効率化を重ねて、あらゆるムダを削り取りながらなんとかやってきた感じでしたけど。でもその方法ではもう限界なんでしょうね。「企業努力」だけではどうにもできない段階になっているというか。
安田
ええ。それに当然元請け企業側でも「外注費を抑える」という企業努力はしているわけですから。安く請けてくれるところがいるから、元請けもなんとか利益を確保できているわけで。

鈴木
そうですねぇ。かといって安いばかりでクオリティが低ければ誰も仕事は頼んでくれない。さっきの「会社と社員」の関係で考えてもそうですよね。バリバリ成果を出してくれる社員に「給与を上げてくれ」と言われたならまだしも、そうでないなら…
安田
「だったら他の人を雇うから、いいよ」ってなりますよね(笑)。

鈴木
そういうことです(笑)。
安田
しかも外注先だったら雇用関係もないわけで、すぐに切られておしまいですよね。だからやっぱり下請け企業としても「ウチでしかできないサービスや商品」というものを持っていないと、この先ますますジリ貧になっていく気がします。

鈴木
確かになぁ。でも一方で、元請けと下請けの関係性って「頼みやすさ」みたいな感情でもっていた部分も、意外とありませんかね?
安田
ああ、確かにそういう面もありますよね。BtoBの世界って、「この人に頼んでおけば円滑に回る」みたいなことがすごく重要だったりする。あるいは「あそこの社長、前に助けてくれたから、ちょっと高いけど今回も発注しよう」みたいな。

鈴木
そうそう。とは言え今は、そういう「人間関係によるかさ増し利益」みたいなものが、どんどん絞られてきている。まるで雑巾のように(笑)。
安田
笑。元請け側にも余裕がないですから。それにしても、日本は下請け企業が非常に多いですけど、この人手不足で事業構造が一気に変わると思います?

鈴木
どうかなぁ…ガラッと変えるのは難しいような気がしますけど…。
安田
でも人材を確保できなくなったら、物理的に仕事が受けられなくなるわけですよ。そういう儲かっていない会社がDXとかAIに投資する余裕もないでしょうし。

鈴木
それで言うと、最近は欲しい技術を持っている取引先を、グループインさせることも多いですよね。下請け企業をM&Aして「自社」にしちゃう。まあでも、それもなかなか簡単なことじゃないでしょうし…。
安田
そう考えると、日本に数百万社あると言われている企業の2〜3割くらいは厳しいんじゃないかと。で、最終的には現場兼任の社長さんだけがフリーランス的に残る、と。

鈴木
安田さんがよく仰っている「1人ビジネス」や「家族経営」ですね。
安田
そうそう。イタリアのファミリービジネスのようになっていくんじゃないかなと思うんですよ(笑)。中途半端に社員を雇って苦しむより、全員身内で事業をする。

鈴木
社員の給料支払いを遅らせることはできないけど、家族だったら「ごめん、ちょっと今月厳しいから、支払いちょっと待っとって」って融通もききますし(笑)。
安田
突然辞められることもないし、働き方がブラックだって労働局に駆け込まれることもない(笑)。たぶんこれが、中小企業が生き残っていくための現実的な道のような気がしますね。

対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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