第68回 空き家に残された荷物は「お宝の山」になるかもしれない?

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第68回 空き家に残された荷物は「お宝の山」になるかもしれない?

安田
鈴木さんは『相続不動産テラス』で空き家の売買もされていますよね。空き家なんだから住人はいないと思うんですが、モノはどうなんです? 荷物がそっくりそのまま残っている場合もありますか?

鈴木
ああ、ありますよ。明らかにゴミだな、と思うものも多いですけど、中には高価なものがそのまま残されていたりもします。
安田
なるほど。そういう遺品をリユースする、というビジネスは考えられたことないですか?

鈴木
今は買取業者さんが、価値がありそうなものが残っていたら買い取ってくれるんです。実は自分でもやってみたいなと思って、その業者さんに「目利き」を教わっているところでして(笑)。
安田
そうでしたか!(笑) 今はいろんな分野でリユース事業が拡大していますもんね。「古いものは捨てて新しいものをどんどん作ろう」ではなく、「今あるものを大事に有効活用していこう」という流れになってきているというか。

鈴木
それは実感しますね。SDGsという考え方がこれだけ広まったこともあり、やっぱり「まだ使えるものはできるだけ長く使おう」と、時代が変わってきた感じがします。
安田
ちなみにどんなものがよく買い取られるんですか?

鈴木
うーん、本当にいろいろ…という感じですね。僕からしたら全く価値を感じないものが、なかなかの金額で買われていくこともあります(笑)。
安田
ほう。それは例えばどんな品物なんですか?

鈴木
この前は、信楽焼の狸でした(笑)。
安田
笑。お庭とか店先に置いてある狸の置物ですよね? そんなの売れるんですか!(笑)

鈴木
いや、僕も驚いて「そんなの買い取ってどうするの?」なんて聞いちゃいましたけど(笑)。どうやら今、外国の人に人気があるらしく、海外向けのオークションで売りますって言ってましたね。
安田
へぇ〜! ちなみにいくらくらいで買い取っていかれたんですか?

鈴木
何体かまとめて1万円くらいじゃなかったかな。まぁこちらとしては処分するにもお金がかかるのでラッキーでした(笑)。
安田
本当ですね(笑)。実は今、リユース業をやっている方とも対談をしているんですが、その方が仰るには、リユースでは「販路」がかなり重要なんだと。要は、売れる販路さえあるなら、どんなものでも引き取れるし、お金も生み出してくれると。

鈴木

確かにそうですね。狸の置物だって「海外」という販路がなければ、一銭にもならずにゴミとして捨てられる運命でしたから(笑)。

安田
でもその買取業者さんはどうやって「売れる」って判断したんでしょうね。過去取引した実績があったりしたんですかね。

鈴木
どうなんでしょうね。「とりあえずネットに写真を載せる」って言ってましたけど。ニーズがあれば売れるだろうって。
安田
でもそれを言い出したらキリがないんじゃないですか? 「もしかしたら売れるかも…」と、全部捨てられなくなっちゃいますよ(笑)。

鈴木
なんかそれでもいいみたいですよ。というのも、とりあえず売れそうなものは片っ端からネットに写真を載せて、ニーズがなさそうだと判断した商品は、そのままゴミとして捨てればいいって。
安田
あぁ、なるほど。シンプルながら効率的な作戦かもしれない(笑)。

鈴木
ですよね(笑)。あとはメルカリなんかに出品されているものを見るのも、一種の判断基準になるみたいです。「こんなものでも、これくらいの値段で買う人がいるのか」と。
安田
ああ、そうか。アプリでリユースの市場調査ができちゃうわけですね。

鈴木
そうそう。ネットだと「売れるかどうかの判断」が比較的簡単にできるので、昔に比べれば在庫リスクも低くなってるみたいです。
安田
とは言えね、ウチの奥さんもよく「捨てるならメルカリに出そうよ」って言うんですけど、実際にやるとけっこう大変じゃないですか。品物をキレイに掃除して、いい感じに写真を撮って、梱包もきちんとして、郵送料もかけて…ってなると、そこまで手間をかけてるのに利益はこれだけ? とガックリしてしまう(笑)。

鈴木
それだったらさっさと捨てた方が早いって思っちゃいますか?(笑)
安田
…ええ、本音は(笑)。でもやっぱり時代は「リユース」ですから、なんでもかんでも捨ててしまうのは心苦しくもある。誰かがまとめて引き受けてくれるといいのになぁなんて思っちゃいますね(笑)。

鈴木
笑。宝飾品やカバン、靴といった高価な商品は、専門の買取業者さんも多いんですけどね。
安田
ちなみに鈴木さんの現場感覚として、今後、空き家に残された荷物のリユース業って拡大していきそうですか?

鈴木
ええ、間違いないと思います。というのも、仕入れがものすごく安い=元手がほぼかからないので。しかも、売れるかどうかの判断はネットですぐに分かる。だから商売としてやりやすいとは思います。
安田
アメリカだとガレージセールっていうのがあるじゃないですか。時々、荷物がたくさん入っているコンテナごとオークションに出されることもあって。そういう感じで「空き家の中にあるもの、全部まとめて買ってもらう」という商売はどうですか? 「お宝が出てくる可能性もありますよ」って宣伝して(笑)。

鈴木
実は今それと似たようなことをやろうとしているんですよ(笑)。
安田
あ、そうでしたか! さすがですね〜(笑)。

鈴木
笑。空き家を売ろうとする場合、普通は家の中にあるものを全て運び出さないと、日本人の方にはなかなか売れないんですよ。でも外国人の方はむしろ「そのままの状態で売って欲しい」というニーズが多くて。
安田
ほう。荷物は残っていていいから、ちょっと安く売ってくれ、ということですか?

鈴木
そうそう。空き家を「そのままの状態」で買ってくれるので、こちらとしても荷物の処分をする手間が省けますし、お客さんも「使えるものはそのまま使えるし、売れるものがあれば売ろう」となるんですよ。
安田
なるほどなぁ。お互いWin-Winの関係になるわけですね。これから始められるということですので、いつかまたどういう結果になったのか教えてください!

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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