この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第73回 人件費アップに対応するためには、値上げするのみ
第73回 人件費アップに対応するためには、値上げするのみ

ああ、そういうことか。確かに時給が低いと人は集まりづらいでしょうね。とはいえ、最低賃金もどんどん高くなっていますよね。岐阜の最低賃金もついに1000円を超えるみたいですし。

うーん、もう「値上げ」しかないでしょうね。商品・サービスを値上げして、その分、給料もアップさせる。これしかないでしょう。とは言え、いきなり値上げに踏み切るのではなく、まずは「コストカット」から取り組んでいこうかなとは思っていまして。

そうそう。というのもウチの支出で大きいのが「家賃」。これは確実に毎月かかっていくコストなわけです。

なるほど。でも土地や建物を購入するのではなく賃貸でやっていくって、御社の重要な戦略なわけですよね。その方がスピーディーにドミナント展開ができるって、以前の対談でもお話されていました。

まぁそうなんですが、これが今になってものすごく響いてきているのも事実です(笑)。最初に契約した物件がかれこれ20年以上は契約しているので、次の再契約のタイミングで一応、交渉はしてみようかなと思っているんですけどね(笑)。

なるほど(笑)。人件費の方はどうですか? 今後って労働人口がどんどん減っていく一方じゃないですか。そんな中で考えられるのは「人を使わない経営」か「値上げ」の2択になると思うんですが、鈴木さんはやはり後者を選びますか?

まぁ、ウチの仕事はサービス業なんで、そもそも「人を使わない」というのが絶対無理なんですよね(笑)。葬祭という「人の気持ち」に寄り添う事業なのでなおさら。だから「人件費を削る」という選択肢はないですね。

例えば家族葬におけるお茶出しとか、御用聞きとかは既に移行し始めてますね。今までは何度もお部屋に伺ってお茶を出したり、「何か御用はありますか?」なんてこっちから聞いていたんですけど、最近は「どうぞご家族だけでお過ごしください。すべてご自由に使ってくださって構いませんので」とだけ伝えて、お声がけいただいたときにしか対応しなくなっています。

そうそう。そのように必要な人員数を少なくしていけば、1人あたりの給与を下げることなく、でも全体的な人件費は抑えることができる。そういった意味でも、ウチも考えていかなきゃいかんなぁと思っているところで。

でも考えようによっては、完全に身内だけで葬儀をしたいご遺族もいそうですよね。葬儀会社の人が一切現場にいないお葬式というか。もしかすると鈴木さんの「葬儀社としての哲学」には反してしまうかもしれませんが、そうすればさらに人件費も抑えられるのかなとも思います。

まぁそうなんですけど、でも物価が上がってますからこちらも上げざるを得ないですよね。実際少しずつですけど上げ続けていますし。よくお客さんに「前にやった時よりも高くなっとるね」って言われるんですけど、その「前」って10年前とかの話だったりして(笑)。

確かにそうか。ともあれ、これから人件費が高騰していくのは避けられない事実なわけで。そのためにも「サービスの値上げ」や「コストカット」など様々な工夫をしながら利益をしっかり確保して、人件費にも回していけるようにしなくてはいけないんでしょうね。
対談している二人
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。