この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第75回 中小企業がつけるべき力は「商品開発力」か「販売力」か
第75回 中小企業がつけるべき力は「商品開発力」か「販売力」か

前回の対談では「下請け業者は値上げがしづらい」という話をさせてもらいましたね。これってまさに「商流の端と端問題」に付随していると思っていまして。

商流、つまり商品が生産者から消費者にたどりつく流れの中で、発端となる「商品を生み出すところ」と、末端となる「消費者に販売するところ」の両端しか儲からない、という考え方です。

確かになぁ…。そもそも下請け業者の値上げが難しいのは、価格決定権が自分側にないからでもあるわけで。上から言われた通りの金額でやっていて、その僅かな利幅で人件費も上げていくなんて、やっぱり限界がありますよ。

そうなんです。だからこそ商売の仕方を変えなければならない。先ほど鈴木さんが仰ったように、別に事業はどれだけ変えてもいいわけで。極論、製造業の会社がいきなりラーメン屋を開店したっていいわけですよ。

今のお話を聞いていてちょっと思ったんですが、皆一度「フランチャイズ・ショー」に行ったらいいかもしれない(笑)。

成功しているビジネスモデルを見ろ、と(笑)。確かに自分で商品を作れない場合は、誰かが考えた商品を売っていくというのはアリかもしれない。ということは、鈴木さんとしては「売れる商品」を作るよりも、「販売力」を手に入れる方がいいとお考えですか?

確かになぁ。その話で思い出しましたが、ちょうど先日、ある同業者の方と「弔花」の話になりまして。その会社は2つの金額のみをパンフレットに載せていて。

ですよね? 30万は年に1回注文があるかどうかという程度らしいんですけど、それでいいんですって。要は、2つ金額が並んでいれば、お客さんは必ずどちらかを選んでくれるわけですよ。ちなみに15万というのもそれほど安い値段設定なわけでもなくて…。

まさにそうなんです。こちらとしてはメニューとして提示しておけばいいだけ。ちょっとした工夫で、お客さんの心理には大きな影響を与えられる。これはいいなと思って、早速ウチもそのやり方を取り入れようかなと思っています(笑)。

素晴らしいですね。いやぁ、葬儀業界は値上げが難しいと仰っていましたが、今後、のうひ葬祭さんがどうやって値上げをしていくのか、興味深く見守らせていただきたいと思います(笑)。
対談している二人
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。