泉一也の『日本人の取扱説明書』第9回「山との国」

昭和天皇は南方熊楠に影響を受けられ植物を研究なさったそうだが、南方熊楠という日本の大天才は、森林にこもり菌の研究をした。熊楠は『ネイチャー』誌に51本の論文が掲載され、これは日本の歴代最高記録らしい。熊楠の粘菌研究は有名だが、民俗学に文化人類学にと、文化を徹底的に研究していた人でもある。その熊楠が、明治政府の神社合祀政策(神社を合併統合して減らす)に反対をした。なぜなら、神社が守る森(鎮守の森)が失われることを危惧したからだ。それぐらい、森は日本の文化にとって大事なのだ。

余談ばかりになったが、日本人にとって山とは何か。それは、命を育む聖なる存在。山岳信仰によって、日本人は命を育む対象に敬意を持ち崇めるという精神性を育てた。その精神性が豊かであることが、日本文化の礎になっている。

では、それを経営に活かすにはどうしたらいいのか。簡単である。命を育む存在に敬意を表し、感謝する行事をすればいい。その行事を通して「聖」の感性が高まる。つまり、会社という組織に命を与えている存在、スタッフとその家族、お客様、仕入先、協力会社、関連会社、株主たちが、お互いに敬意と感謝を表現し、その思いを伝え合う場をつくればいい。活性化していない会社は、そういった場がない。逆に活性化している会社は、たとえば「○周年」というイベントを丁寧に企画し、大切にしている。

 

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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