泉一也の『日本人の取扱説明書』第17回「商人の国」

「商」という言葉は、もともと中国の最初の王朝の名前からきている。我々は歴史で「殷」と習ったが、これは後の歴史学者司馬遷がつけた名前からきている。殷は慇懃無礼に使われるような陰氣な漢字なのだが、いろんな説があるのでここで触れるのはやめておこう。ところで、「商」は紀元前17世紀から紀元前1046年の王朝だが、その後日本では弥生時代が始まっている。とすると周に滅ぼされた商の人たちが日本へわたり、縄文から弥生へといざなった可能性が考えられる。なぜなら弥生時代に稲作がはじまり、経済と国づくりを一気に加速させた時代だからだ。商は「あきない」というが「秋なう」からきている言葉である。つまり秋の収穫時に商売が盛んになるので、稲作が始まった頃にできた言葉にちがいない。その秋なう時、つまり米の収穫時に商から来た人たちが経済を活性化してくれたので「商人」というようになった。世界初の先物取引は日本の米市場だったのように、商のセンスは受け継がれていたのだ。

もし商のセンスが弥生時代から受け継がれているのであれば、日本語をはじめとした文化に随所に散りばめられているはずである。よって日本文化をきちんと学べば「儲かる」のだ。怪しい商法のセミナー的にいうと、「信じる者が儲かる」のです。そして信じるか信じないかはあなた次第なのです!!

では会社の経営で何をすればいいのか。簡単なのは日本語の感度を皆で高めることである。ロジカルシンキングやマーケティングといったオシャレなお勉強ではなく、日本語のお勉強である。たとえば日本語の美しさを学ぶには、俳句や書道をすればいい。日本語でみなをリラックスさせるには落語をはじめとしたお笑いを堪能すればいい。日常の仕事の中でも、これはどういった言葉で表すがの一番いいのか?と広辞苑や大辞泉を片手に、言葉を探せばいい。オヤジくさいのがOKであれば、ダジャレもいい。「経済」や「場活」のように漢字で造語をつくるのもよし。つまり日本語への感度をどんどん上げていくことである。いや、感度をボチボチ上げていくことですわ。

 

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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