泉一也の『日本人の取扱説明書』第27回「おっさんの国」

おっさんも以前は若者であり、上の世代のおっさん達と関わりながら、おっさん菌に侵されていくのだが、何があったかというとおっさん達と関わって、疲れはてていくのだ。現場の声を会社に!と意気揚々としていた現場の人が、管理部門に異動してしばらくすると疲れはて、現場の声を聞くのが邪魔くさくなるケースはよくある。まさにこのように、おっさん文化は引き継がれていく。

このおっさんはレールが敷かれている安定期には活躍する。鎖国政策の江戸時代、明治から昭和初期の軍国時代、高度経済成長まっしぐらの昭和。しかし、レールがなくなる時にはおっさんは最大の障害になる。明治維新を起こしたのは若者であるし、太平洋戦争敗戦後はGHQがおっさんを公職追放し、若者が中核に台頭した。

今は、レールが敷かれている安定期なのか、それともレールがなくなる変動期なのか。安定期であれば、おっさんにお任せをした方がいい。変動期であれば、おっさんを追放するか、うまくおっちゃんに変わってもらう。変動の渦中にある企業では55歳役職定年などといって、嘱託社員などにしておっちゃん化させようと努力している。年齢で制度を作るのもいいが、本来はおっさん度が高ければ、ご卒業を促した方がいい。そして次第に、おっさんが居づらい場にしていけばいいのだ。カビ菌が繁殖しないよう、風通しをよくして、綺麗に掃除するように。あくまでも言っておくが、これは社会が大きく変わる変動期の施策である。今が安定期というのであれば、必要ない。

このコラムを「おっさんちゃうか!?」という人に渡して、読んでみてくださいと依頼してみよう。その時、相手が「邪魔くさそう」にしたらおっさんである。そしてあなたも、そんなことすること自体、邪魔臭いと思ったら、すでにおっさん菌に侵されているのですよ。

 

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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