第153回「共助の国(第4話)」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第153回「共助の国(第4話)」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

第3話までのお話。共助(ともすけ)は子供たちと共にジジョロンに対峙することになる。共助はキョウジョに共感する仲間を求めて、各地へと歴訪する。一方、子供たちは「本」をジジョロンの地に戻す旅に出た。

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共助にエルフとドワーフという頼もしい仲間が合流した。エルフは「オカゲサマ」という聖なる弓を、ドワーフは「オタガイサマ」という聖なる斧をもっていた。オカゲサマで矢を放てば、一本の矢は何百本にも増えて飛んでいく。オタガイサマの斧を振りおろせば、その衝撃波で周囲20メートルは吹っ飛ぶ。エルフとドワーフの力を借りて、共助は次々とジジョロンの派兵軍団を撃破していった。

子供たちには強力な魔法使いが合流した。「オテントサマ」という魔法の杖をもっていて、その杖から生まれる魔法は、周囲百メートルを聖なる光で包みこみ、邪悪な存在の力を一気に奪った。

それぞれの一行は、そんな頼もしい仲間と共に数々の妨害と強敵をはねのけながら、お役目を果たす旅が続いてく。そして決戦の日が徐々に近づいてくるのであった。

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共助に力を与えるのは、「お陰様」「お互い様」「お天道様」の3つ。「お・様」という2つの敬語を付けているのを見てわかるように、日本人が大切にしてきた価値がここにある。

<お陰様>
自助の世界では、成功は自分の努力の結果であり、失敗は自分の努力不足だとする自己責任。自立した美しさがそこにあるが、寂しさもあろう。

共助の世界では、成功したら周りのお陰、失敗したらお陰様の力を使えなかった自分の徳不足を恥じることになる。

<お互い様>
自助の世界では人間関係、組織間で問題が生じたら、どっちに問題の責任があるのかを白黒つけようとする。法律でルールを決め、そのルールの読み解き方で責任の所在をはっきりさせ勝ち負けが決まる。法律と裁判の仕組みがしっかりできあがることで、その土台の元、法的な契約をもとにした信頼関係が生まれる。

共助の世界では、人間関係、組織間で問題が生じたら、お互い様という土俵にのって、話し合いで決める。それぞれが悪いから問題が起こったという前提のもと、マイナスから互いがゼロになるように話し合う。そして最後は水に流す。

<お天道様>
自助の世界では、Godが罪を罰する絶対的な存在として君臨する。自助を追求していくとそのGodの見えざる手が最適解を出してくれる。神に誓うことで、その誓いを土台にした権力と権威が合わさった組織が生まれ統率される。

共助の世界では、先祖も含めた人々の共通良識が天となって、人々を見守る。天は母性的な受容で包み込むが、不正や不義理をすると父性的な厳しい面をみせる。その天を感じる人々の間で信頼関係が築かれていく。

お陰様、お互い様、お天道様の3つの「お・様」が共助を作り出したことがわかっただろう。わかったけどじゃあどうやって共助の文化を取り戻すのか?と疑問が湧いてきただろう。第5話に続く。

 

 

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著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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