第119回 崖に向かって着実に進む国

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第119回「崖に向かって着実に進む国」


安田

ついにグローバルダイニングさんが、東京都に損害賠償を求めましたね。

久野

あれ、すごいですね。

安田

小池都知事は「時短に応じない店に罰金を払わせる」と言ってまして。グローバルダイニングさんは堪忍袋の尾が切れた感じです。

久野

まあ現状を考えたら、誰も暴動を起こしてないのが不思議なぐらいですから。

安田

そうですよね。飲食店は補助金で潤ってるとか言われてますけど。そんなのすごく小さな店だけで。

久野

やっぱり説明つかないですもん。「なんで飲食店だけか」っていうのが。

安田

そもそもみんな「時間じゃない」って言ってるじゃないですか。時間ではなく「人数を絞らないとだめだろう」「昼間に大人数で行ったら意味ないだろう」って。

久野

そうですね。「一蘭」みたいな店だったら時間は関係ないし。

安田

普通に考えたら「時間を延ばして人数制限するほうが感染しにくい」ってなるはずで。

久野

私もそう思いますね。

安田

時間を短くしたら、空いてる時間にみんな詰めかけるわけで。実際に早い時間ってめちゃくちゃ混んでるし。ほんと不思議な対応をしますよね。

久野

今回も狙い撃ちにしたんですよ。グローバルダイニングを。

安田

狙い撃ちですか。

久野

はい。SNSで発信してたことを問題視して。事業停止命令を出した27店舗のうち26店舗がグローバルダイニングの店舗だったんです。

安田

もはや権力を使ったいじめですね。

久野

いじめです。「都の対策がよくないからこんなことになった」「営業の自由がある」ってことを訴えて。干された感じ。

安田

公権力がこんなことしていいんですか?

久野

ダメですよね。ちゃんと問題を切り分けなきゃいけない。いちばん問題なのは都民も国民も納得していないこと。よくこれで我慢してるなって思います。

安田

そりゃあ納得できないですよ。緊急事態宣言も「500人切ったら解除する」と言ってたのが解除しなくて。2週間延ばしてる間に感染者が増えてるのに解除して。なんか、もう、むちゃくちゃな状態です。

久野

根拠があってやってるようには見えないですよね。

安田

「飲食店で時短やることがとにかく正しい」って決めつけて。「今さら方向転換できない」という大前提でやってるように見える。

久野

過去の政策を「間違いじゃなかった」と証明するために、やってる感じがします。

安田

かなりお金も撒いちゃいましたし。責任問題になるんでしょうね。

久野

それが一番よくないです。それをやっちゃうと新しいことが生まれなくなるので。間違ってたことを「間違いでした」って言えるリーダーが必要です。

安田

たとえば時短をやめて人数制限にして。一気に感染者が減ったら、国民はうれしいけど政治家はうれしくない。

久野

だって、これまでの失敗がバレるじゃないですか(笑)

安田

「あの6万円の責任は誰がとるんだ!」ってことになりますよね。

久野

払った6万円より、失われた経済活動に対して言われると思う。もう1年も経ってるのに何も改善されてない事実があって。

安田

確かに。莫大な損失ですよね。

久野

新しいことをやったがために「なぜ今まで思いつかなかったんだ」と言われるのが嫌。「夜の飲食店がそもそも原因じゃなかった」という事実はまずいんでしょうね。

安田

昼間から高齢者がカラオケに行って、感染してたり。どう考えたって、大声で昼間から歌ってるほうが感染するに決まってる(笑)

久野

不思議ですよね。第2波・第3波のときは、カラオケはべつに制限かかってないですもんね。

安田

そうなんですよ。過去の決断が「間違ってた」って言えないから、いまも継続してるとしか思えない。

久野

ですね。

安田

そもそも「政治家は結果責任だ」って言うじゃないですか。先どうなるかわからないときに決断するのがリーダーなので。

久野

はい。誰もやりたくない決断をするのがリーダーの仕事です。

安田

「結果責任をとって俺は辞める」という意欲がないのなら、そもそも政治家になっちゃいけないですよ。

久野

そうじゃない人がやってますけどね。

安田

マスコミにも問題があります。過去の犯人捜しばかりしないで、新たな決断をしたリーダーをもっと支持するべき。

久野

マスコミは視聴率のことしか考えてないですから。

安田

元を辿れば国民が悪いんでしょうけど。そういうゴシップが好きなので。

久野

政治家を選んでいるのも国民ですからね。

安田

ですよね。解散して選挙やったら、また自民党が勝つかもしれないわけで。そしたら次はもうやりたい放題ですね。

久野

どうなるか想像つかないですね。

安田

このままいったら、えらいことになりますよ。

久野

リーダーは有事に弱いし誰も身を捨てられない。かといって、どこを選んだらそれが実現するのかがわからない。だからまた同じことをくりかえすわけです。

安田

断崖に向かって着実に進んでますね。

久野

国民もチャレンジしてないと思う。自民が違うと思えば別の党に全員がベットすればいい話なんです。けどそれすらやれない。

安田

政治家だけの責任ではないと。

久野

お互い様みたいなとこはあります。

安田

官僚組織もそうだし、大企業もそうじゃないですか。人のミスを許さないし、だから忖度しあって、不正があってもうやむやになっていくし。

久野

そういう国民性ですね。残念ながら。

安田

ミスがあったら全員で袋叩きにしますからね。「誰がやったんだ?誰が決めたんだ?」って。叩かれるのが嫌なので何も新しいことができない。

久野

たたく文化みたいなのはすごいですよ。

安田

それが日本国の最大の課題なんでしょうか。

久野

日本人の課題は、本当のピンチになっても何も変えられないこと。

安田

ピンチに弱いですよね。戦争で負けたときと何も変わってない。「作戦は間違ってない!」って言いながら玉砕していくだけ。

久野

めちゃくちゃ炎上しそうな話ですね(笑)

安田

でも事実じゃないですか。

久野

企業であれば外国人の経営者が来て、一気に変わることもあるんですけど。

安田

ゴーンさんは追い出されましたよ。

久野

ゴーンさんは色々問題がありましたから。でも叩かれる風潮はありますね。

安田

外資に買われそうになると「日本の大企業を守れ!」とか言うくせに。「誰のせいなんだ!責任とれ!」ってチャレンジして失敗した人を追い詰める。

久野

政治の世界はもっとひどいです。

安田

海外から呼ぶわけにもいかないですしね。

久野

失敗できない空気が蔓延してますね。新しいことや画期的なことを自分たちでは何もやれない雰囲気。

安田

海外から呼べなくて、自分たちでも出来ない。じゃあどうすればいいんですか?

久野

その答えが第三者委員会ですね。いろんな人を呼んできて決めてもらう。

安田

政権に忖度する人ばっかりじゃないですか。

久野

忖度しそうな人を呼んでるんです。だから審査する能力も弱い。もう完全に行き詰まってます。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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