泉一也の『日本人の取扱説明書』第5回「足し算の文化、引き算の文化」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第5回「足し算の文化、引き算の文化」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

 

 

西洋は足し算の文化、日本は引き算の文化である。

西洋の料理は、素材にスパイスを振りソースをかけてどんどん足し、
日本の料理は、素材の味を引き出しダシの中で素材同士を引きたて合わせる。

西洋の絵画は、リアルで立体的に写実し、油絵などは油で塗り重ね、
日本の絵画は、シンプルに平面的に表現し、水墨画では余白を際立たせる。

西洋の詩は、ドラマチックな物語を叙事詩にして、吟遊詩人が歌いながら語り、
日本の詩は、最小の言葉と平易な「かな」を使い、和歌に俳句に言葉の間を感じ合う。

話は変わって、企業研修の打ち合わせで、ある「問い」に私は興ざめする。

「泉さんの研修をするとどんなスキルが得られますか?どんな成果が得られるのですか?」

確かに学びからどんな成長・成果が得られるのか問うことはごく自然であるのに、この問いに興ざめしてしまうので、西洋と日本の学習の違いで考えてみた。

西洋の学習は、足すこと。知識を増やし、技術を得て、成果を達成する。
日本の学習は、引くこと。先入観を手放し、執着を捨て、「空」にいたる。

興ざめするのは、場活研修が日本流の学習だからだった。

アンラーニング(今までの学びを手放して、学び直すこと)という西洋の言葉が日本の教育界で使われているが、書くのもはばかられるぐらい気色悪い。和服の下にジーパンを履いているような感覚。アクションラーニング(学んで実践し振り返りをしていく学習法)という西洋の言葉も、油絵の具で書道をする感じで、気持ち悪い。

感想・著者への質問はこちらから