第144回「風が吹けば桶屋が儲かる国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第144回「風が吹けば桶屋が儲かる国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

「風が吹く→桶屋が儲かる」その途中の経緯をここで説明するのは省くが、一見関係なく見える原因と結果を表現している。

学術的に言うとバタフライ・エフェクト。

ブラジルの蝶の羽ばたきが原因で、テキサスで竜巻が起きるといった話を聞いたことがあるかもしれない。非常に小さな撹乱でも、遠くの場所の気象に影響を与えるか?という問いから生まれた数値予報のお話。難しく言うと、「カオス理論における、初期値鋭敏性の寓意的な言い換え」である。

エフェクトというと、ワールドトリガーのサイド・エフェクト。トリオンの影響により発現した特殊能力のことであるが、このトリオンは「風」であり「蝶の羽ばたき」のようなものである。といっても、ワールドトリガーという漫画・アニメを見たことがないと、なんのこっちゃか分からない。この機会に読むか観るかをして欲しい。

一見、関係ないように見えるものでも、つなげていくとそれが結果を生み出す。人間にとってトリオンとは言葉。言葉を使えることで、サイドエフェクトである「ツナギ」という特殊能力を得た。ツナギとは、関係性を作り出す力であるが、人間は言葉とこのツナギで原因と結果を作り出せる。

世界はカオス(混沌)であるが、そこに原因と結果をツナグのが人間であるが、せっかくタダでもらったこの能力、意図的に使ってみよう。

どこで使うかと言うとスタートである。スタートにおける微妙な差が時間と共に大きな差になる。バタフライ・エフェクトはスタートが肝心。例えば、今、誰と新しく出会うかよりも、どの親の元に生まれるかの方が人生に与える影響は大きい。

ではスタートを言葉でツナいでみよう。どの親元に生まれたのかを、自分なりの言葉でツナげてみるのだ。私がこの親元に生まれたから世の桶屋が儲かっているぐらいでちょうどいい。その視点で言葉にしてみるのだ。ヒントは「お陰」。そのおかげで、よかったこと、感謝することを言葉化する。あの親に生まれたおかげで、この国のこの時代に生まれたおかげで・・・

これは自分の得になるように言葉にすればいいのだが、間違っても「あの親元に生まれたから!この国に生まれたから!この時代に生まれたから!」と恨み節的にツナいでしまわないように。もしそうしたら「恨みの竜巻」が人生に起こる可能性を高めてしまう。恨み恨まれ好きであれば、意識的にそうしてみるといいが。

これで、人生というカオスの初期値鋭敏性を意図的に自分の都合のいいように変えたので、都合のいい竜巻が巻き起こりやすくなった。蝶の羽ばたきのごとく、ちょっとしたことである。こんなちょっとしたことで?と言うかもしれないが、都合のいいことが異常にたくさん起こる人にヒヤリングすればわかる。人生の初期値を「自分のお得」にしているはず。

「風が吹けば桶屋が儲かる」と庶民が言えるのが日本。バタフライエフェクトなんてかっこいい言葉で学術的に言うのが西洋。日本は庶民がバタフライエフェクトを活用できる国だといっても過言ではないだろう。

このコラムを読むのは蝶の羽ばたきぐらいに過ぎない。であるが、これをスタート(初期値)にすれば、人生に起こるエフェクトは桶屋が儲かる的竜巻である。どんな儲けが起こるか、それは誰もわからないが、楽しみにして待とう。

 

 

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著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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