泉一也の『日本人の取扱説明書』第91回「過敏症の国」
著者:泉一也
日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。
過敏症という病氣がある。近いものにアレルギーがあるが、過敏症の中でも免疫反応をしているものを指すらしい。
高校の時、蕁麻疹が頻繁にでるので、病院に行って注射を打ってもらったら、その瞬間に蕁麻疹がドドドと出てきた。過敏症というのは、薬で何とかできるものではないと実感した瞬間であった。
過敏というのは反応がいいという証拠である。感知するセンサーの感度が高いという突出した能力。感度が高過ぎると余計な反応をして病氣になるのだ。つまり過敏症とは突出した能力のコントロールができない「暴走状態」と言える。高校の時、私の免疫という素晴らしい能力が暴走していたのだ。
この観点で見ると、過敏症の人に「あんた氣にしぎやで」とアドバイスすることは突出した能力の否定になる。もしアドバイスするならその能力の素晴らしさを認め、どうやったら暴走させずうまく操縦できるのかを一緒に考えることだ。
日本という国は今、過敏症にかかっている。子供達を中心に「食」にアレルギーがあり、春の訪れの「空氣」に花粉症を起こす。そして社会と繋がる「組織」ではハラスメントとメンタルの病が起こっている。人間が生きていく上で必須な、食・空氣・組織に対して過敏症を起こしている。なんて生きにくい世界なのだろう。
町で合う人たちは空氣から遮断するためにマスクをしているが同時に顔が隠れる。口元は笑顔を表現する中心部分であるが、それが見えない状態。サービス業でマスクが嫌われる理由はここにあるだろう。マスクをした顔の見えない病人風の人たちが町中にそして組織の中に跋扈する光景。世界大戦の時に、ガス攻撃を受けた市民がガスマスクをしている光景とどこか似ている。
そして、新型コロナがさらに拍車をかけた。朝一でドラッグストアに行ってマスクが売り切れていると、紙を材料にするトイレットペーパーやティッシュもなくならないかと不安になり、大量買いをする。そうすると売り切れた棚を見て、友達に善意で不安を伝染させ、マスコミもネタで放映してしまう。そうして不安の連鎖から買い占めが起こり、生活必需品が手に入らないという事態を招き、さらに生きにくい世界と化す。
過敏症は病院に行って抑え込む薬をもらっても治らない。ではどうしたら治るのか。それは過敏症の元になっている突出した能力をしっかりと見極め、その操縦する方法を考えだせばいい。
日本人の過敏症を起こしている突出した能力とは「世間の目を感じる能力」。周りの空氣に過敏に反応し、同調圧力に流され忖度をするのは、まさに世間の目を感じる素晴らしい能力の暴走である。暴走すると世間の目が不安要因つまりアレルゲンとなるのだ。不安が内向きになると自閉的になり、外向きになると人や社会への怒りや不満となる。
世間の目を感じる素晴らしい能力をどのように活用すればいいのか。そこに過敏症を治癒する道がある。私は医師ではないので、解決策という薬は提供できないが、場活師であるので、治癒する場を作ることはできる。つまり素晴らしい能力を活用するには?という問いで、衆知を集める場づくりができるのだ。
過敏症のこの国では、場活師が棚から消える日は近いだろう。
泉 一也
(株)場活堂 代表取締役。
1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。
「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。