第68回 ゼネラリストが絶滅した未来

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第68回 ゼネラリストが絶滅した未来

安田

昔は大企業に入社した時点で生涯年収3億が約束されていて、うまく出世すれば4億5億と目指せる世界でしたよね。


渡邉

ええ。もっとも「会社の指示命令があればどこにでも行きます」という条件の上でですけどね。どの事業部にだって異動するし、誰の部下でも文句は言いませんと。

安田

そうそう。でも今は大手ですら、「転勤がある」というだけで新卒が入ってこなくなった。製薬メーカーのような研究職ならまだわかりますけど、総合商社でも一番人気がないのは海外勤務らしいんです。


渡邉

へぇ、そうなんですね。総合商社なんて、海外でバリバリ働きたい人がこぞって入る世界でしたけど。商社に行かなかったとしても、社会全体が転勤に対してそんなに抵抗がなかったというか。

安田

昔はそうだったんですよ。転勤すると基本給とは別に出張手当が出るし、住むところも用意されていて、何年かの出張が終わって帰ってきたらけっこうお金もたまっていたりして。


渡邉

そうですよ。いろんなところに行けてお金までもらえて、言うことないでしょと思ってましたけどね。

安田

でもそれは我々世代の常識であって、今の若い子は転勤どころか、望まない事業部への配属すら辞める理由になるんですよ。反りの合わない上司の部下になっただけで辞める子もいるくらい。


渡邉

うーん、自由ですよね(笑)。それだけ選択肢が増えたということなんでしょうけど。

安田

20代のそこそこ優秀な人材って本当に貴重ですからね。大企業でさえも地域限定職を設けたり、事業部も入社前から約束するほどの手厚さで。……さすがに上司までは約束できないでしょうけど(笑)。


渡邉

昔は地域限定職って「一般職」と呼ばれていて、給料も安かったんですよね。出世コースからも最初から外れていて。

安田

それが今はスタンダードですからね。「この地域で、この事業部で、この仕事で」と限定しないと人が来ないので。「なんでもやります!」というスーパー総合職みたいな人は、むしろ超レアな存在なんです。


渡邉

なるほどなぁ。「優秀」の定義の一つに成長欲というか、「どこでも行っていろんな経験を積んで成長していきたい」っていう要素もあると思うんですけどね。

安田

意欲は評価されるでしょうけど、転勤でいろいろ経験したから本当に成長できるかというと、実はけっこう曖昧だったりしますから。それよりはスペシャリティをじっくり学んだ方がいいという考え方が主流になっている。

渡邉

確かに。転勤で人生経験は積めるでしょうけど、仕事に直接結びつく成長かどうかは未知数ではありますね。

安田

それに「一度できたコミュニティから離れたくない」という思いもすごく強いらしくて。例えば大学進学で地方から上京したら、そこからもう動きたくない。


渡邉

へぇ、なんででしょうね。このネット時代ならどこに行っても繋がれるはずなのに。

安田

リアルで繋がってる人が少ない分、今の繋がりや距離感を断ち切りたくないという感覚が強いみたいですね。


渡邉

ははぁ、なるほど。ネットの繋がりが当たり前になると、逆にリアルでの繋がりが貴重に感じるんですかね。

安田

そうかもしれません。その感覚が多数派だとすると、転勤させることのリスクが大きくなってくるわけです。共働き家庭だと別居前提にもなるわけで。旦那さんの転勤に合わせて奥さんも仕事を変えることを求めるのは時代錯誤というか。


渡邉

確かに、世界基準で見ると転勤なんてさせませんもんね。「この地域でこの仕事で」というのが大前提で、そこでパフォーマンスを上げれば給料が増える。

安田

そうそう。夫婦それぞれがフルタイムで働いていると考えると、両方が週2日くらいは在宅リモートワークができて、毎日定時に終われるという環境じゃないと、日本人は雇えないだろうなと。


渡邉

それはそうですけど、そんな甘っちょろいことを言っていて、国際社会で勝ち残っていけるんですかね。これからどんどん海外からいろんな人が入ってくるでしょうし。

安田

勝てないでしょうね。「お金になるなら世界中どこでも行きます!」みたいなハングリーな若者も、中国をはじめとして世界にはたくさんいますし。

渡邉

そうですよね。そうなるとどんどん日本人の存在価値がなくなってしまう気がしますね。

安田

というよりも、日本人はそもそもそういう生活を望んでない人が多いですから。もちろん中にはハングリー精神にあふれた人もいますけど、「その代わり年収は5000万6000万くださいよ」という条件付きなわけで。

渡邉

そこで格差が広がっていくんでしょうね。そういう人が日本人には少ないとなると、今後はどんどん外国人の経営者になっていく企業も増えてきそうですよね。

安田

間違いなくそうなると思いますよ。日本人の真面目さと優秀さは世界でもトップクラスなので、上の人がしっかりマネジメントして気持ちよく働けるようにしてくれたら、成果は出るんじゃないでしょうか。むしろその形が一番パフォーマンスが上がるのかもしれません。


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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