住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。
第82回 60歳以上しか採用しない会社
新卒の初任給がここ2~3年で30万円を超えるなんて言われてますもんね。中小企業にとっての採用のハードルがどんどん上がってますよね。
ええ、本当に。最低賃金も1,500円を超えて2,000円くらいまではいくんじゃないか、という話もあるくらいですから。
いやぁ、すごい時代ですよね。月収でいうと最低でも28万円くらいになるわけで。今まで一つの会社で長く働いていた人も、転職で給料が上がるとなったらどんどん動き始める気がしますね。
そうなんですよ。20代~30代はもちろん、40代も年収が100万円くらい上がるとなったらわかりませんよ。むしろ「何割引き留められるのか」というところだと思います。
長年勤めた「情」みたいなものもあると思いますけど、どうしても生活のことを考えますからね。…でも40代までがどんどん流出してしまうとなると、外部人材を活用するだけでは間に合わない気がします。やっぱりどうにか自社社員を増やす方法を考えないといけない。
仰るとおりで。そうなると、もう「シルバー人材」を活用するしかないんじゃないかと思うんですよ。かくいう私もシルバー世代なわけですが、そこを狙って雇用すると。
今まで考えたことがなかったですけど、確かにそこは手つかずですから、マーケット的には狙い目かもしれない。
そうなんです。そういうこともあって、実はちょっと試したいことがあるんですよ。「60歳以上だけの会社が成り立つかどうか」を真剣に検証してみたいんです。
えっ、シルバー世代だけの会社ですか? それはなかなかイメージしにくいかもしれない…
今まで聞いたことないという人がほとんどでしょうからね。でも実際に60代と20~30代の両方を採用している会社の話を聞くと、60代の方がよく働いてくれるらしいんです。今の20代は成長意欲があまりない人も多いらしくて。
ああ、なるほど。「静かな退職」なんて言葉もありますもんね。辞めはしないけど、必要最低限の業務しかしないという。
それだとまだいい方で、とにかくできるだけ働かないようにするというパターンもあるらしいです。会社にとって自分は「赤字」だけど、自分からしたら働いた分より給料がもらえてるから「黒字」だと。
ええ…それはすごい考え方だなぁ。つまり10万円分しか働かずに、20万円の給料をもらうってことですよね。それはさすがに今の60代以上の人にはない感覚ですよね。むしろ給料以上に働いて当たり前でしたから。
そうそう。良かれ悪しかれ、「与えられた指示以上に頑張る」というのが染み付いているわけです。まぁ、もちろん体力の問題もありますし、中には「窓際族」と言われるような働かない人もいますけど。ともあれ全体数としては働く意欲のある人の多い世代ではあるんです。
確かに確かに。60代なら大手が狙ってないから、マーケットにもゴロゴロいると。
そういうことです。だから採用するにしても、1人の募集に対して10人来たりする。つまり選択肢も増えるわけです。
なるほどなぁ。60代って新たな場所ではどうしても苦戦するイメージがありましたけど、先入観を取っ払って考えた方がいいのかもしれない。
実際に採用された人の話を聞くと、皆本当に真面目ですからね。「ここに骨を埋める覚悟で、拾ってもらった恩を全力で返します!」という感じで。
ははぁ、いいですね。そんな若者がいたら採用しちゃうなぁ(笑)。まぁでも、今までの中小企業は新卒や若手が中心で成り立っていたけど、もうそういう時代じゃないということなんでしょうね。
ええ。日本の平均年齢が50歳を超えている中で、20代中心の会社を作るなんて、よっぽどタフじゃないとできないですよ。
確かに。ただ、理屈ではすごく納得できるんですけど、やっぱり懸念点もある気がするんですよ。経験やノウハウがたくさんあるからこそ、あんまり人の話を聞けないんじゃないかとか。
それはその人の考え方や性格によるところでしょうね。どの世代にも「人の話をすごく丁寧に聞く人」もいれば「全然聞かない人」もいるわけで。そこをちゃんと見極めて採用すれば問題ないと思います。
ああ、そうか。そもそも応募もたくさん来るわけだから、しっかり選んで採用すればいいわけですね。
そうそう。あと体力的な面で心配なら、例えば給与を下げて週休3日とかの条件にしてあげるとか。本人も今からバリバリ稼ぎたいという感じでもないでしょうし、会社としても人件費が抑えられていいじゃないですか。
なるほどなるほど。子育ても終わって、そんなにお金もかからなくなってるから、やりがいの方が大事だっていう人も多そうです。
ええ。「年金だけでも生活できるけど、それでは味気ない」という人が一番多いんじゃないかなぁ。日本人は真面目ですから、「何歳になっても人の役に立って喜ばれたい」という気持ちが強いと思いますし。
そう言われてみると、20~30代は生活のために働いているから、コスパ重視なのかもしれませんね。その点60代は経験値もあって、貢献意欲も高い。そう考えると、建築業界でも施工管理などの分野では経験値が求められるので、特に相性がいいかもしれない。
そうですね。会社の業績を上げることを考えたら、結局「いかに利益を出すか」と「いかに人間関係のトラブルをなくすか」なんです。それでいくと、真面目なシルバー世代を採用するのは、理にかなってると思いますね。
対談している二人
渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役
1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。