スタート地点を見極める

 

良い企画書と、悪い企画書。
良い接客と、悪い接客。
良い提案と、悪い提案。
シーンは違えども、そこには共通する要素がある。
それは、ストーリーの有無だ。

良い企画書、良い接客、良い提案には、
必ずその根底にストーリーが流れている。
悪い企画書、悪い接客、悪い提案には、
単なる説明の羅列しかない。

ストーリーとは、顧客の心理を誘導するシナリオのことだ。
シナリオどおりに誘導できれば、
商品は売れ、顧客は満足し、評価は上がり、報酬は増える。
つまり、良い事尽くめなのである。

にもかかわらず、これまで目にしてきた企画書、
受けてきた接客、聞かされてきた提案で、
ストーリーを感じたものは1割にも満たない。
そのほとんどは、単なる説明であり、
単なる案内であり、単なる営業であった。
なぜ、これほどまでに、人はストーリーを軽視するのか。
それは、スタート地点を間違えてしまうからである。

たとえば企画書であれば、
その表紙を見ただけで、ストーリーの有無は一目瞭然だ。
相手との距離感(関係性)、相手の心理(ニーズの強弱)、
相手の性格によって、ストーリーは変化する。

想像してみて欲しい。
ディズニーファンと、ディズニーランドで、
着ぐるみを着てハグをする。
これはファンサービスである。
ディズニーに興味がない人に、
通勤途中、着ぐるみを着てハグをする。
これは犯罪である。

当たり前の話なのだが、
この違いを理解していない人が、あまりにも多い。
丁寧に説明しているつもりで、顧客の興味を削いでしまう。
親切に案内しているつもりで、顧客を不快にしてしまう。
それは、スタート地点を間違えているからである。

丁寧な説明であるかどうかは、顧客の心理によって異なる。
案内されたいかどうかも、顧客の心理によって異なる。
相手が何を望んでいるのか。
相手が何を警戒しているのか。
相手が自分をどう見ているのか。
それを吟味した上で、ストーリーは展開されなくてはならない。

「〇〇株式会社御中」
「当社○○サービスのご提案」
もし企画書のタイトルがこのようなものならば、
99%そこにはストーリーがない。
つまり、こちらの心理状態に関係なく、
相手はひたすら自社商材の説明をしてくる、ということ。
そんな説明を聞きたい人がいるだろうか。
丁寧に説明されればされるほど、こちらは退屈していく。

期待させるタイトル。
内容がとても気になる目次。
それを作ることが出来たなら、
相手の心理を掴めているということだ。
痛い所をいきなり突くべきなのか。
経営哲学で共感を得るべきなのか。
他社の事例で危機感を煽るべきなのか。
それは、相手の心理状況によって異なる。
大事なのは、スタート地点を見極めること。

期待しているのか、疑っているのか、危機感を感じているのか。
相手の心理に合わせ、その心理を誘導する。
疑問から、期待に向かうシナリオ。
期待から、確信へ向かうシナリオ。
どんなシナリオを考えるかは自由だ。
だが、スタート地点が相手にある事だけは、忘れてはならない。


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