人生というゲームにおいて、飛車角に相当する最強の駒。
それは紛れもなく、お金と時間である。
どんなに忙しい人も、どんなにお金がない人も、
駒を取り上げられている訳ではない。
ただ単に、その使い方を間違えているだけである。
毎日忙しいのに、ぜんぜん稼ぎが増えない。
そういう人達に共通するのは、
二つの駒の間違った使い方である。
第一に、自分の時間を簡単に売り渡してしまう。
時間を売るとは、お金をもらう代償として、働くということだ。
人は、お金と時間を、交換し合いながら生きている。
お金をもらって働くというのは、
相手のお金と自分の時間を交換するという行為。
お金を払って人を雇うというのは、
相手の時間と自分のお金を交換するという行為。
金持ちだから雇うのではなく、
貧乏人だから雇われるのでもない。
交換が上手だから金持ちになっていくのであり、
交換が下手だから貧乏になっていく、
というだけの話なのだ。
第二に、稼ぐのが下手な人たちは、
お金を使う事を必要以上に惜しむ。
生活のため、趣味のためにお金を使い、残りを貯蓄に回す。
つまり、消費と貯蓄だけにお金を使い、
投資には一切お金を使わないのである。
投資とは、株を買ったり、商売を始めたりする事で、
そのリスクはとても高い。
と、多くの人は考えている。
だから、そんなリスクは回避し、堅実に貯蓄しているのである。
だがそれは、飛車や角という最強の駒を使わずに、
将棋をしているようなものだ。
使ったら失う可能性は、確かにある。
だが使わなければ、持っている意味がない。
重要なのは飛車角を取られないことではない。
勝負に勝つことだ。
将棋も人生も、ひとつも駒を失わずに勝つことは不可能である。
素人は飛車角を失う事を恐れ、勝負に負ける。
プロは勝負に勝つ為に、あっさりと飛車角を捨てる。
重要なのは、何と交換に飛車角を捨てるのか、である。
もちろん、お金以外にも、人生ゲームの駒はある。
土地、宝石、株などの金融資産。
肩書き、実績、名誉などの社会的資産。
それらの駒を交換しながら、人生ゲームは進んでいく。
だが勝負のキーになる駒は、やはり時間とお金である。
なぜなら時間は、すべての人に平等に与えられた駒だから。
そしてお金は、あらゆるものと交換可能な、
ジョーカーのような駒だから。
すべての人は時間という駒を持って生まれて来る。
そして時間と交換に、お金をという駒を手に入れる。
大事なのは、その次の手順だ。
時間はただで手に入るが、減る一方である。
お金は何かと交換でないと手に入らないが、
いくらでも増やすことが出来る。
自分の時間を他人のお金と交換する。
自分のお金を他人の時間と交換する。
どちらが正しいというものではない。
どちらの交換も、人生には必要なのである。
大事なのはバランスなのだ。
ひたすら時間を売るという戦略は間違っている。
限りある時間を、簡単に売り飛ばしてはならない。
そして、手にしたお金を必要以上に惜しんではならない。
二つの駒を、バランス良く使いこなすのだ。
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