物理的に考えるなら、
自分と他人は別個の存在である。
他人が傷つくのを見るのは心苦しいが、
自分の肉体が傷つくわけではない。
もちろん痛みを感じるわけでもない。
社会的な成功や経済的なことになると、
その傾向はより顕著なものになる。
他人の失敗や他人の貧困は、
時には自分の快楽にすらなり得る。
人間社会は他人との比較によって成り立っているので、
他人の下落は相対的に自分の上昇を意味するからである。
自分以外の人間が自分よりも仕事が出来ず、
自分よりも貧乏で、自分よりも幸せではない状態。
それは相対的に自分が
「仕事が出来て、経済的に豊かで、幸せな状態」
ということになる。
実にさもしい精神構造ではあるが、
これが人間の本質であることは確かだ。
同級生が自分より勉強が出来ない。
自分より走るのが遅い。
自分よりモテない。
同僚が自分より仕事が出来ない。
自分より上司に認められていない。
自分より給料が少ない。
この状況を喜ばない人がいるだろうか。
認めたくないかもしれないが、
私たちは他人の不成功を歓迎している。
それは知らず知らずのうちに
刷り込まれた感覚なのである。
この現実を自覚して抜け出さない限り、
本当の豊かさは手に入らない。
なぜなら自分と他人とは、
必ずどこかで繋がっているからである。
他人の成功を願い、他人の成功を支援し、
他人の成功を喜ぶ人。
それは彼らが聖人君子だからではない。
他人へのアクションが自分へのリアクションと
なることを、彼らはよく理解しているのである。
人間の体にはツボと呼ばれるものがある。
掌のツボを刺激すれば脳が活性化し、
足の裏のツボを刺激すれば内臓が活性化する。
不思議な相関関係ではあるが、理解できなくはない。
なぜなら手と頭、足と内臓は繋がっているからだ。
どう繋がっているかは解明されていないが、
確かにそのような相関関係がある。
そういうものが私たちの周りにはたくさんある。
自分と他人とは、
まさにこのような相関関係によって繋がっている。
自分とは何の関係もなさそうな他人。
その人に親切にし、支援し、
豊かになってもらうことによって、自分も豊かになる。
社会で成功している人たちの多くは、
他人に与えることの効果を自覚している。
なぜそうなるのかは重要ではない。
大事なのは、どのツボを刺激すれば
どういう効果が現れるのかを知っていること。
他人こそが人生のツボなのである。
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