人間ワークの境目

職業に貴賎はない。すべての労働は
尊敬に値する立派なものだ、という考えがある。
一方で「なくてはならない仕事」と
「なくてもいい仕事」があるという考えもある。

確かに人間社会の仕事には優先順位が
あるように見える。たとえば高齢者の介護。
道路工事などのインフラ整備。
子どもたちの教育なども
なくてはならない仕事と言えるだろう。

だがそこに携わっている人たちの
報酬は決して高いとは言えない。
尊敬を集める仕事とも言い難い。
ゆえにどんどん不人気になっていく。

仕方なくやっているという人もたくさんいそうだ。
誰かがやらなくてはならない
エッセンシャルワークの報酬はもっと増やすべきだ。
それが現場の言い分である。
確かにそうかもしれないが我が国には財源がない。

なくてはならない仕事。
にもかかわらず報酬が低く不人気の仕事。
だったらいっそのこと無人化してはどうか。
こういう議論をすると「AIによって人間の仕事が
奪われてしまう」と反対する人が出てくる。

やりたくない仕事を奪われて怒るのが
人間の面白いところである。
稼ぎの問題やプライドの問題など、
個人の事情と感情は一旦忘れて、
人間がやるべき仕事の境目について考えてみたい。

必要不可欠な仕事は誰かがやらなくてはならない。
だがそれは人間がやり続けるべき仕事なのだろうか。
私にはそう思えない。必要だが誰もやりたがらない仕事。
そんな仕事はどんどんAIに任せていけばいいのである。

では人間がやりたがる仕事に関してはどうか。
ここにもAIに委ねるべき仕事はある。
たとえば国家運営という仕事。
さすがにそれは人間がやるべき仕事だろうか。

だが人間はミスをする。
感情にも左右されるし不正や忖度もする。
人間に任せるよりはよほど信頼できそうではないか。
実際にAIは資産運用という分野を任されている。

人によっては命より大切だと考えている資産。
日々それを守り増やし続けているのである。
だが金儲けだけにAIを使っている場合ではないはずだ。

日本は後退期のど真ん中。
財政は逼迫し少子化も止まらない。
増税と予算カットは不可避な状況である。
その仕分けを人間がやれば必ず不満が出る。

AIが緻密に計算した結果なら国民も納得するしかない。
選挙も必要ないし人件費もいらない。
いいこと尽くめだ。

必要不可欠な仕事、ミスが許されない仕事、
みんなが納得する判断。
これらはもはや人間の仕事ではないのかもしれない。

 

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1件のコメントがあります

  1. コラムの内容は、政府の仕事は政治家や行政従事者は下手くそな人が多いので、皮肉にもAI的な脳みそで行動と結果を出していくのは「なるほど~」と思いましたが、中々適用しないのかな~とも思いました。何故ならそのAIの適用は、政治家や行政従事者が選択するからです。
    示唆に富むコラム、ありがとうございます。

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