会社を売る。
ここに戸惑いを感じる経営者は多い。
なぜならそこには社員がいるからだ。
ともに働き、ともに喜び、
ともに目標を追いかけてきた仲間たち。
会社を売るとは一緒にやってきた
仲間を売るようなものだ。
自分にはお金が入るが社員には何も入らない。
ただ売られていくだけ。
あなたを信じて頑張ってきたのに
自分だけお金を手にして抜けていくのですか。
そう言われているような気がする。
社員をファミリーと呼ぶなら家族を売るようなものだ。
そんなことが許されるはずがない。
これは日本人経営者のよい部分でもあるが、
それ以上に大きな問題を抱えた部分でもある。
感情を交えることがよくないと言っているのではない。
経営者としての判断を誤ってしまうことが問題なのだ。
会社を売るとはどういうことなのか。
経営者はふたつの側面からこれを考えなくてはならない。
ひとつは会社にとっての利益である。
この会社の社長として自分はベストな人選なのか。
能力の低い身内を経営者に据えるのは
愚の骨頂であるが、自分もまた然りだ。
これは創業社長でも同じである。
時代の流れによってビジネスモデルは変化するが、
長く続けすぎると経営者は業界の常識や
自分の立場に慣れきってしまう。
適切に社長を交代していくことは
会社にとってのメリットであり、
社員にとってのメリットでもあるのだ。
そしてふたつ目。これがとても重要だ。
それは社員のためではなく自分のための会社売却。
会社は社員を労わらねばならない。
社長である自分もまたその中のひとりなのだ。
社員は会社を辞める権利を保障されている。
どんなに可愛がろうと、どんな約束をしてようと、
辞めますと言われたらそれまでだ。
だが社長には一方的に社員を解雇する権利がない。
赤字社員であっても給料を払い続けなくてはならない。
じっさい借金をしながら給料を払い続けている
経営者はたくさんいる。
社長である以上これは義務なのだ。
損をしようが、体を壊そうが、精神を病もうが、
社長は仕事を続けなくてはならない。
社員に給料を払い続けなくてはならない。
社員はいつでも会社を辞められるが社長はやめられない。
会社が潰れても借金はついてくる。
ここを脱する唯一の方法が売却なのである。
売却は社長にとっての権利であり
自分を守る唯一の手段なのだ。
辞めたくなったら胸を張って会社を売ればいい。
後ろめたさなど持つ必要は微塵もないのである。
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1件のコメントがあります
一人社長の社員無しで、10年後に社長退任を目指し子供達に事業承継中です。
子供たちが承継するに値する事業でない場合、又は、子供たちが社長の器にない場合、
会社売却と再確認をしました。
メールのコラムの最後の方の
「何歳で死ぬかではなく、
何歳で死ぬと思って生きるのか。
ここがとても重要なのです。」
に感銘を受けました。
コラムの作成と配信、ありがとうございます。